洋ラン学園
教科書
洋ラン大学院
続け方

難しい種類の咲かせ方、毎年咲かせる、手間を省くなど
2012改訂 前書き
小学校から大学までで、一通りの育て方と咲かせ方を述べました。
花は一度咲いても翌年咲くとは限りません。そこで「翌年も、毎年咲かせる」方法が必要になります。咲きにくい種類も取り上げます。
「趣味でない園芸」なら、なるべく手間をかけないで育てる方法が必要です。

まえがき2013秋
難しい種類の育て方と咲かせ方
洋ラン学園の標準的方法で、市販の洋ランの大部分は良く育って咲きます。
その中で、やや育ちにくかったり咲きにくい種類があります。その育て方や咲かせ方を問題別に検討していきます。
目次
続け方
手間を省く方法
 鹿沼土植え−ミズゴケ・バーク・定期植え替え不要
 スリット鉢植え
 雨任せ−定期水やりほぼ不要
 置き場所遮光ネットほぼ不要
 雨ざらし−殺虫剤不要、雨除け−殺菌剤不要
 液肥・追肥不要
 夏の植替え−新苗

難しい種類の育て方と咲かせ方
−バンダ−バンダ・ロール
咲きにくい種類−大明石斛とグラマトフィラム−多年型・冬知らず

毎年咲かせる・続け方−作落ちの原因と対策
株分け
オンシジウム
根を育てる

洋ラン学園(21世紀の洋ランの育て方と咲かせ方)トップページへ戻る



手間を省く方法
鹿沼土植え
ミズゴケ植えでは定期的に早めに植え替えないとほぼ必ず根腐れします。
そうかと言ってバーク植えは材料が入手しにくく、水が少なければ乾きすぎて生育不良になり、乾かないようにするには頻繁に水やりが必要です。
鹿沼土植えは、ミズゴケよりは含水量が少なく、低温での乾きも早いため、少なくともミズゴケよりは根腐れしにくいのです。

鹿沼土・透明ポリポット植え、ミズゴケ・バーク・素焼鉢(それらの備蓄と保管場所・鉢洗いの手間)・定期植え替えが不要、水やり間隔も長く
鹿沼土は保水量はミズゴケより少なくて鹿沼土より多く、乾きの早さは夏のミズゴケより遅くてバークより早いため、植え込み材料としてバークやミスゴケとほぼ同等なのは明らかです。
その上、有機質のバークやミズゴケでは避けられない短期間の腐食が無いため、植え替えの間隔を長くでき、乾いたときの撥水性でないため水やりが楽です。小粒は乾きにくく、大粒は根の間に入りにくく保水量が少ないため、硬質の中粒が適しているようです。
どこの園芸店にもあるので手に入れるのが簡単で備蓄・保管の必要が無く、必要なら再使用も可能で、要らなくなったら最小限を土に戻せます。

根の耐湿性
しかし、根腐れしやすい洋ランを植える以上、注意が必要なことは当然です。
洋ラン学園では、全種類を鹿沼土で育てていますが、根の丈夫な種類から始めるのが良いでしょう。なお、パフィオの根は乾燥にも過湿にも弱いとされてやっかいですが、鹿沼土はちょうど合っているようで、市販の苗にも使われています。和蘭、東洋蘭は長年の実績があります。

パフィオペディルムで使われることがあるように、多くの種類でも根腐れせず、水やり間隔を長くでき、水切れしにくく良く育って花が咲きやすくなります。
シンビジウムやデンドロビウムはまず大丈夫です。一般的には、低温性で根の細い種類は根腐れしにくく、バンダ・コチョウランやカトレヤなど根の太い種類は気を使います。
オンシジウムは鹿沼土が合っているらしく根腐れしにくいです。
エピデンドラム・オンシジウム・セロジネ・ミルトニアなど徐々に経験を積んで広げていくと便利です。

洋ラン学園ではほぼ全ての種類に鹿沼土を試しています。
鹿沼土が使えるかどうかの指標として、「根の耐湿性」が考えられます。
バンダは、「根をむき出しでなく、鉢に植えると、2週間で痛み始め、1カ月で根腐れしてしまう」と言われます。根の耐湿性が最も弱いと言えるでしょう。ミニバンダは風蘭に見られるように鉢植えができますが、他のミニ洋ランに比べると、弱い方です。
コチョウランは、バンダと近縁で根の太さも似ていますが、温室でミズゴケ植えで生産されていることから分かるように、耐湿性は勝ります。特に室内で周年育て、年間を通じて、また一日を通じて最低温度が20℃以上に保たれていれば、初めて育てる人でも、鹿沼土植えでも育てられます。その意味では「高温の室内で育てる」方が屋外より安全と言えるでしょう。
カトレヤは、コチョウランと共に家庭での栽培に魅力的ですが、大型になることもあって、鹿沼土の雨ざらしでは、ミズゴケ植えに次いで根腐れの恐れがあります。エピデンドラムもその点では近縁のカトレヤに似ています。

鹿沼土植えが一般的に可能な種類とバーク植え推奨種類(洋ラン学園ではほぼ全種に用いています!)

植え込み材料容器・植え方

根の丈夫な種類
鹿沼土植え
鹿沼土
スリット鉢 根を薄着に
芯入り
1シンビジウム、2デンドロビウム・ノビル系、
12キンギアナム、12+大明石斛
6オンシ、8ジゴペタ、16マキシラリア、aミルトニア・スペクタビリス、15グラマト、
5パフィオペディルム
一セッコク、春蘭、エビネ、五報歳蘭・駿河蘭
根の弱い種類
バーク植え
バーク
透明ポリポット 根を片むき出しに
芯入り
横穴開け
3カトレヤ、7エピデン、9セロジネ、11デンファレ、11フォーミ、14デンキラ
高温の周年室内栽培ミズゴケペットボトル 二段
周りに隙間
4ミニコチョウラン、3ミニカトレア、4コチョウラン
バンダ類ミズゴケバンダ・ロール根を片むき出しに

ワルケリアナ系は高温期冠に良く根が伸びます。
 
ワルケリアナ・アルバ’ペンデンティブ’  チェリー・ソング・アルバ




鹿沼土植えで根腐れしない種類

鹿沼土・スリット鉢植え−植え込み材料・ラン鉢・大型鉢とその保管場所・廃棄不要
根の丈夫な種類は、鹿沼土で植えると、湿り・乾き共に適度で、水やり間隔を長くでき、生長が旺盛になります。
さらに、丈夫なので透明ポットで根を観察する必要が無いので、乾きの早い「スリット鉢」を用いることにします。

鹿沼土・スリット鉢植えのレシピ、
オンシジウム アロハ・イワナガ
1年前の秋に入手した開花株の新芽が高くから出て、根は全部鉢の外なので、一回り広いスリット鉢に鉢増ししました。
 



スペシオ・キンギアナム
  
根鉢がぎっしりなので傷めないようにほぐします 中央に発泡スチロール芯を入れる スリット鉢に入れる

定期水やり不要
なんと言っても、一番多い世話は水やりです。「趣味の園芸」では、種類や季節により細かく水やり間隔を変えるように言われておりどれが正しいか混乱するばかりでなく、夏場は毎日と過朝夕に水やりが必要とされ、手がかかりすぎます。
しかし、洋ランは乾燥に耐える植物で、その反面真夏には水を切らさないと旺盛に生長して良く咲きます。
鹿沼土植えは、低温期以外は、保水量も乾く早さも適当なので、雨ざらしにしておけば定期水やりの必要が無くなります。4,5,6,11月は一切水やりしなくても大丈夫な位で、7,8月の盛夏も合計で数回で足ります。
水やりのレシピ−毎日の降水量と水やりの回数
表は、昨年の日々の降水量の例です。屋外で雨任せにして、一定期間雨が降らなかったら水やりすることにすると、月当たりの水やりの回数は下の行のようになります。実際は翌日雨が降ると予報で分かっていたら水やりをやめても良いのです。水やりの必要な高温の月ほど雨降りが多いのです。この例では5,6月は1回も水やりする必要がないのです。年や地域によりばらつきはあっても、水やりが不要と言う事情は変わらないと思います。どんなに暑くても月に4回以下で、むしろ冬の室内の方が冬知らずでは水やり回数は多い位です(この結果春のスタートが早くなり花が咲きやすくなるのですが、ただし実際にはさぼって週1回もやらずにからからになることが多いです)。これでもこれまでの方法の小さめの鉢やバーク植えに比べると給水量は多いため、良く育ちます。
「毎日」どころか、「定期的に水やりする必要が無くなる」、一夏に10回以下なのです。

毎日の降水量

1月23456789101112
1日

8.5
2.5


23.0

3.5
2




13.0
0.5 2.5

3.0
3



3.5

4.0 12.5 *
48.5
4





0.5 10.5 9.5


5




18.0 1.5 7.5 5.5 53.5 2.0 3.5
6

29.5





1.5 5.0
7

1.0 *7.0
2.5 5.0
9.5
2.5
8
3.5


2.0



0.5 5.0
9




0.5

*3.0

10
9.5

3.0

*
3.5

11
2.5
7.0 38.0 17.5 *7.5

17.5
12



13.0 0.5





13
23.5


27.0

*


14
1.5




*
1.0 8.5
15





*
0.5 14.0

16
1.0


12.0

30.5 6.0

17
51.5

6.0 13.5
*



18


*
4.0

3.5


19


26.0
0.5 34.0 41.0 35.0
41.0
20





8.0
157.0 *

21

17.0

1.5 2.5 15.5 1.0 4.5

22

15.5
7.5

25.5 0.5 38.0

23

3.0 17.0 8.5 2.5
3.0



241.0

1.5 24.5
*3.5



25




0.5
14.5



26



2.5

14.0 0.5 **
27


2.5 3.5 1.0 *




28
30.0
0.5 17.5
4.0




29



91.0
1.0 *



30



20.5 3.5 33.0 2.0 **

31

1.0


7.0 2.5
0.5

水やり回数566200443315
条件週1回5日毎5日毎 雨除け
週1回
4日雨なし4日雨なし2-3日雨なし2-3日雨なし4日雨なし4日雨なし 雨除け
週1回
週1回
雨の日数287615161015131166
シンビジウムはこれより多く、コチョウランは雨除け期間が長い。他の種類は皆同じで、多少の湿りのバラツキにかかわらず一斉に水やりしています。暑い時期は雨上がりに濡れの悪い鉢に水を足します。
最低気温が0℃前後の期間(12月前半と3月)は、基本を屋外とし、水やりは雨任せにしています。0℃を大きく下回ると予想される夜だけ、室内か軒下(低温種)に取り込みます。これでも水やりより手間はかからないし、乾き気味の鉢を十分に湿らせ、特に春先は生長を刺激することができます。
水やりをやめる
洋ランは乾燥に強いので、過湿にも過乾にもなりにくい鹿沼土植えなら、雨に当てない場合は真夏を除き水やりは週1回で済みます。そこで、1週間以内に次の雨が降るなら、雨除けをしていない場合は水やり不要になります。3月も大半は屋外、4、11月も一部の種類を除いて雨に当てることにすると、屋外では7,8月以外は水やり不要と言うことになります。9月は1週間以上雨が降らなくても我慢してもらうのです。むしろ、屋内の12-2月の方が水やりすることになるのです。
 
鉢底横穴開けで上から下まで乾きが同じになります、春から秋は雨任せで足りない時だけ水やり、冬知らずで冬は乾きすぎる位です
自然へ還す(3)雨季には日照りはありません、乾季には過湿がありません
鹿沼土植えなら、雨が数日降らなければやり、雨上がりに不足な鉢に追い水して湿りを揃えます。「何日おき」や「鉢を一つ一つ見て」は不要で、夏でも平均すると週に1回程度です。
鹿沼土は保水量はミズゴケより少なくて鹿沼土より多く、乾きの早さは夏のミズゴケより遅くてバークより早いため、植え込み材料としてバークやミスゴケとほぼ同等なのは明らかです。

置き場所と遮光−遮光ネットほぼ不要
水やりに次いで面倒なのが遮光です。「趣味の園芸では強光種・中光種・弱光種に分け、10%刻みの遮光率が指定され、しかも月ごとに遮光率が変わる」という、実現不能のやり方が推奨されています。
洋ラン学園では、遮光に関しては直射、木漏れ日、木陰・日陰の三通り位で、木漏れ日・木陰は、落葉樹や多年草の葉の茂りに従って変わっていくので、一部・一時期を除いては遮光ネットが不要です。

夏の植替え−新苗
洋ラン学園では、植え替えは高温の夏に行うことが多いです。春は他の作業で忙しく、気温が低くて屋外での作業が億劫なことがあります。また根が十分活発になっていないため、植え替え後に吸水不足で萎れたり、水やり方で根腐れしたりという障害が起きやすいためでもあります。
一方、夏は「趣味の園芸では植え替えをしてはいけない季節」とされることが多いです。しかし、根が元気なため、植え替えからの回復が早いこと、根腐れの心配がないことが有利です。元来休眠期とされているので、植え替えで休んでも構わないはずです。高温と乾燥にさらすと苗は弱りますが、植込みの中などの涼しくて保湿できる場所に置けば問題ありません。また、「傷口から腐る」のも夏の植え替えを嫌う理由ですが、根などに傷を付けないように行えば問題は少ないです。

株分け
花を咲かせるには、大株・群生株・分岐株ほど確実で豪華なので、株分けはしませんが、中には咲かせるために株分けが必要な種類もあります。
オンシジウム
芽がだんだん高くなり、根が植え込み材料に届かなくなって作落ちする
株分けの時期
新芽が小さいうちに分けると、大きく育たず作落ちします、長さの伸びが一段落した夏の終わりから秋の初めを試しています。
株分けの場所
一番先の新芽だけでは、親の力が無いため大きくなれないので、一つか二つ前の処から切り離し、最初の近くは低く植えるようにします。
残った方はそのままで、また新芽が出て咲くのを待ちます。
  
オンシジウムの根は丈夫で、新根は鹿沼土植え・雨ざらしでどんどん出ます。開花株から新しい芽が出るたびに高くなっていくので放っておけません。昨年の開花株の処から切り離しました。

透明軟質ポリエチレンポットに、底板・中芯を置いて苗を置きます。これまで植えてあった方法と同じです。


マキシラリア
ポリフィロステレは非常に芽吹きが良くて生長が旺盛なので鉢からはみ出しました。鹿沼土植えの方は分けやすそうだったので将来を見越して半分ずつに分けました。鉢はスリット入りのプラスチック鉢にしました。
  
2011年に入手し、東芽軟質ポリポットに鉢増しして1年半後、子が鉢外に飛び出し根も一部は空中に
  
鹿沼土植え  半分ずつに分けたところ  スリット入りプラ鉢の底の中心に発泡スチロールの芯を置き根を被せたところ

鹿沼土を隙間に半分ほど入れたところ

ミニカトレア フリースピリット
芽ぶきが良くどんどん株数が増えるので込み合わないように株分けしました。(10月前半)
  
開花株を入手してから1年  ミズゴケ植えで雨ざらしのため根腐れ 茎が枝分かれしている処から切り分け
  
左:大きい方   中・右:小さい方


株分けを見越した鉢増し
新芽が増えて、鉢が一杯になり、根鉢も出来上がってくると、鉢増しや株分けが必要になります。
しかし、鉢増しするとそれまでの根は、「片むき出し」でなくなるので、根腐れする恐れがあります。
また、根鉢ができていると、それを崩して植込み材料を全部取り除き、株分けを強引にしないために根もほどいて伸ばしたりなどとしていたら、手間がかかって大変で、苗も痛みます。
ですから、植え替えや鉢増しの時に、古い根を薄着にしたり、将来の株分けに備えたりできると良いと思います。
その一案として
鉢増しの際に、鉢に沿って芯を入れ、根鉢の一部が植込み材料に覆われずに「片むき出し」を続けられるようにする
同様に、将来の株分けの線を見越して、芯を入れて根鉢ができないところを作っておく、
のはどうでしょうか。
手間がかかるようでも、鉢増しよりもてのかかる株分けの手間が減らせて、根痛みも減るなら、全体としては、必ずしも手間が増えたことにはなりません。
株分けを見越すというのは、複茎種で匍匐茎が枝分かれしていたら将来切り分けるポイントになるので、そのあたりは根鉢を造らないようにすると良いのです。


育てにくい種類−バンダ
初めに
バンダは、バスケット植えで根をむき出しにして育てるのが普通です。このため、毎日根を湿らせる必要があり、趣味でない園芸では世話がしきれません。「洋ラン学園」では、バンダ・ロールを開発し、対策に勤めていますが、まだ研究途上です。しかし、バンダ族は洋ランの中心的メンバーなので、とりあげることにし、大学院で検討します。
詳しいことは「バンダのページ」にあります。



咲きにくい種類−大明石斛(タイミンセッコク)とグラマトフィラム
初めに
「洋ラン学園」では、園芸店で手に入る大部分のランの咲かせ方を公開済です。まだ、大明石斛とグラマトフィラムだけは咲かせたことがありません。これらに共通するのは「大型で咲かせるまでに何年もかかる」ことのようです。その反面、一度咲いた新芽にはその後も咲く性質があるようです。まずは開花株を入手して、翌年の「お土産花」に期待しながら、新芽を元気に大きく保つのが良さそうです。
検討中の経過を紹介します。「大明石斛」か「グラマトフィラム」のページにあります。




作落ちの原因と対策−毎年咲かせる、続けるの最大の問題
初めに
洋ランを育てていても全然咲かないことがあります。大抵初めのころより株が小さくなっています。「毎年咲かせる、続けるの最大の問題」と言えるでしょう。

作落ちの原因
作落ちの原因と対策を系統的に考えたものは見られません。以下のような色々な場合があり、それぞれ、対策が考えられます。


原因洋ラン学園の対策

根腐れ ミズゴケ植えをやめる・スリット鉢
根を薄着の安全植え・透明ポットで中を見て水やり
低温期は鉢の保温
冬知らずで冬の根腐れ絶滅


親株が小さい 大株の入手
大株・群生株作り/株分けは避ける


鉢が小さく水不足 根を薄着の安全植えで鉢を大きめに
夏は水やり多めで水切れ防止


芽欠きをしないで養分分散シンビ・キンギなどは芽欠きを

半年型で生育不足 慣れないうちは半年型は避けるか待つ
冬知らずで春の芽出しを早く(夏咲)
夏は水やり多め(冬咲)












根を育てる
初めに
根腐れや枯れを気にせずに良くなり、多くの種類が大きくなって咲くようになると、残った問題の原因は、「根張りが不十分」に帰着します。
バンダを育てるのは根を以下に健康に保つかに尽きると言っても過言ではありません。大きくならない苗、咲きにくい種類も、何らかの理由で「根を十分張っていないこと」が原因のことが多いです。「初めての洋ラン」の「ペットボトル植え」、「洋ランを育てる」の「透明軟質ポリポット植え」の長所は、「鉢内の根が見える」ことです。
2013年は「根を育てる」を中心テーマにしたいと思います。


旧版
初めに
本やHPを見ると、どれにも同じようなことが書いてありますが、知りたいと思ったことは、いくら探してもみつからないことが多いです。例えば、パフィオの新芽で咲かなかったら2年目に咲くのか、ジゴペタラムの咲かなかった新芽はどうなるのか、などです。ここでは、なるべく体系的な知識を提供し、疑問に思ったことを調べたり、専門家に教わって書いていきます。「易しく、親切に」書くことはしていません。
「洋ラン大学」までは、基本的にどの種類も同じ世話で咲かせる方法が書いてあります。同じ方法で試さなければ、本当に種類により特別な方法が必要かどうか分かりません。大学院では、その上で、種類により変えると確かに効果があることや、特別な方法が必要な場合を検討していきたいと思います。また、基本はなるべく世話を少なく、単純にすることを目標にしています。例えば、液肥をやったり、吊り鉢にしたりなどはしません。「大学院」では、少し手間を増やす場合も紹介します。

目次
自生地の様子、単なる再現は下策
植え込み材料について (ミズゴケは貴重な植物)
バークの湿りと濡れ
洋ランの鉢
複茎種の株のでき方、初花株、大株、群生株
新芽が出てから咲くまで
花茎の出方
根を育てる
洋ランの観察
放任栽培

自生地の様子、単なる再現は下策
洋ランは、コツさえつかめば、「単なる宿根草」として育てることができます。コツとは、「自生地の様子に近付ける」ことです。洋ランは自生地の環境に適用するように進化しています。そのため、自生地と違う環境、特に気候に対しては抵抗力が弱く、一方、自生地と同じ環境では、最も良く生長し花を咲かせると思われます。
しかし、元々異なる気候を、自生地の物に変えてやることはできません。また近づけようとしても大がかりな設備や、大変な手間が必要になり現実的ではありません。また、気づいたことだけを近づけても効果があるとは限りません。
一方、これまでのやり方で洋ランを育ててもうまくいかないことが色々とあります。それを良く考えると、自生地の様子から異なっているためではないかと思われることがあります。そこで、このようなものから、自生地に近づけてみると、うまくいくことがあります。
例1 根腐れする
洋ランを育てていると初めての人も、名人や生産者も、一番困っているのは根腐れという点では変わりがありません。
その理由として、自生の様子を考えると、自生しているときは、根が空中にむき出しになっているのに、育てるときは鉢の中で培養土に覆われているという、とても大きな違いがあります。最も体に密着しているところで自生とは程遠い状況にしておきながら、周りの気候や環境を自生地に近づけても、うまくいかないのは当然でしょう。
その反面、バンダは普通根をむき出しにして育てられています。しかしそのためには、一般に温室を必要とし、また特に温室がないと毎日水をかけたり霧を吹いたりと世話が欠かせないという問題があります。単に自生地の様子を再現するのも、消費者にとって現実的な方法とは言えません。
それではどうしたら良いのでしょうか。
21世紀の方法は、「根を薄着にする」方法です。鉢植えは、根が厚着で、空気が通らず、過湿状態が長く続いて根腐れしてしまいます。根の周りの植込み材料の厚さを薄くすることで、空気が根に届き、植込み材料の乾きが適度に早くなって過湿が続くことも避けられます。
一方、バンダについても、根の内側だけに植込み材料を入れ、根の外側はむき出しにすることにより、根をむき出しのように快適にしながら、水分の補給は毎日水やりしなくても数日続けられる、という訳です。
単に自生地の様子を再現するだけでなく、自生地と異なる何が不適当で、自生地に合わせると何が大変かを見て、ランと自分にとって都合の良い解決策を見つけることです。
そもそも、洋ランの根はなぜ、むきだしなのでしょうか。熱帯雨林などの中で、地上では日光が不足するなどのために樹上に上がり、その結果として根がむき出しになってしまったと考えることができます。好き好んでむき出しになっているわけでもなさそうです。従って、自生地の通りにむき出しにする必要もないのかも知れません。
この例の他にも、育たない、咲かない理由を考えると、自生地との違いに気づくことがあります。それを重大なものから一つずつ解決していくと、着実に、育ち、咲き、手間を減らしていくことができます。

洋ランは、
暖地産の・
樹木の枝に生えて・
根はむき出しで・
木漏れ日で育ち・
雨季に大きくなって花芽を作り・
乾季に咲き新芽を出し・
乾燥に強く・
雨ざらしで生長旺盛な、
新芽は一度しか咲かない
宿根草です

1 暖地産、5 雨季に大きくなってについて
洋ランの原種は、寒帯から熱帯まで、砂漠に近い乾燥地帯から熱帯雨林まで、海の近くから高山まで生えています。日本の平地では育ちにくい、寒冷地の高山植物(山野草)を除くと、主に亜熱帯に生息しているものが、花が大きくて多彩で豪華なため、園芸に取り入れられています。
温室で育てられてきたのは、このためです。
これまで、洋ランは、寒い冬と暑い夏には休眠に近い状態になると言われ、冬越し、夏越しが課題とされてきました。
しかし、夏にはなるべく涼しく、水切れさせないようにすると、このような「常識」とは異なり、休むどころか、むしろ、夏に最も旺盛に生長することが分かります。
日本では季節というと、主に温度の変化する春夏秋冬を考えますが、世界の大半の地域では、気候と言えば雨季と乾季です。
洋ランは「暖地産で」、「雨季に大きくなる」ので、水を切らさなければ、温度の高い夏の方が、温度の低いそれ以外の季節よりも良く育つのです。「夏に休んでしまうと、新芽が冬までに大きくならず、株が年々小さくなって咲かなくなる」のです。
一方、夏以外の季節は、自生地よりも気温が低めとなり、自生地よりも生長が鈍くなってしまいます。従って、「陽だまりで風を避けて、なるべく温めると良く生長」します。
さらに、「冬は室内で最低気温を15−20℃と高くして冬知らずにすると良く育ち、新芽を早く出す」のです。
2 樹木の枝に生えて、4 木漏れ日で
家庭の放任に近い育て方ではシンビジウムやデンドロビウムは日向で、一方趣味で庭で育てる場合はその他のランは遮光してという場合が多いようです。もっとも、趣味で育てている人を除けば、他の洋ランを庭でうまく育てられている人はわずかです。
しかし、シンビジウムやデンドロビウムでも、原種は日向でなく、樹木の枝に着生して木漏れ日の下で育っているのが普通です。したがって直射日光は、自生地とは異なる環境で、夏などには日が強いというよりは、葉が50℃前後の高熱にさらされ葉焼けを起こします。
そうでなくても、真夏などの日向は高温・乾燥になりやすく、水切れなどで生育が悪くなるので、やや遮光気味の方が良く生長します。
特に茎が細くて葉の薄い、デンドロビウム・デンファレ・フォーミディブル・バンダなどは、木漏れ日下で、水を切らさず、涼しくしてやる方がうまくいきます。
3 乾季に咲き、新芽を出し
日本では洋ランは主に冬に咲きます。そして、冬には休眠状態になることが多いため、これまでは冬越しに必要な温度に保てばよいという扱いが主でした。
しかし、開花期は洋ランにとってはもう一つ大事なことがあります。それは、開花と同時に翌年に咲くための新芽が出てくるということです。
冬は乾季に相当するから咲くのであり、同時に新芽を出すのですが、自生地では日本の冬より暖かいのが普通です。このため、新芽は早く生長します。
そこで「開花期(である冬)は、暖かくして冬知らずにして、新芽を早くだし早く大きくする」ことが大切で咲かせるのに有効なのです。
一方、洋ランの中には、毎年出た新芽が翌年に咲くものばかりとは限りません。例えばパフィオペディルムは、1年では新芽が咲くまでに大きくならず、2-3年かけて咲く場合が多いです。これらは、花季だからと言って休むよりも生長を続ける方が得策です。このためにも「冬知らず」が有効です。
4 生育旺盛、5 新芽は1回しか咲かない
自生地には乾燥地帯もありますが、雨季には大量の雨が、また所によっては毎日降っています。
これまでの育て方は、鉢を小さくするのが普通で、従って乾湿の変化が急で大きくなっていました。
また、家庭での栽培では、遮光に気を付けることは強調されていましたが、「夏以外は自生地より温度が低くて、生長が劣る」事に注意が向けられず対策も考えられていませんでした。
夏以外は、陽だまり、北風よけ、地上よりも高いところに置いて、なるべく温度を自生地に近く高める」、ことが大切です。
洋ランの大半である複茎種の、そのまた大半は、「開花と同時に出た新芽が1年かけ大きくなって、親並みに大きくなって咲く」ことを毎年繰り返します。それらの種類は、「もし、翌年の開花期までに大きさが不十分だと新芽は咲かないで、その芽はもう咲くことがない」のです。
だから、新芽は大きく育てる必要があります。
7 乾燥に強く、雨ざらしで生長旺盛
これまでの方法は、気温(季節)により、水やりの間隔を大きく変えるやりかたでした。夏には毎日とか朝夕水やりしなければならないように言われてきました。これでは世話が大変で、旅行に行くこともできません。その反面、冬には開花中のコチョウランなど10日以上も水やりしなくてよいとされる場合もありました。
洋ランの原種は、茎が肥って大きなバルブになったり、葉が厚肉になっているものが多いですが、これは乾燥に耐えるように進化したためです。また実際、乾燥地帯に生えているランは、乾季には殆ど雨がありません。従って、乾季(休眠期)には長期間の乾燥にも耐えられます。
乾燥に耐えられることを考えると、むしろ「生長期でも自生地の雨のように毎日水やりする必要はない」のです。自生地と異なる不都合は「生長期に長期間水切れになる」ことです。それはなぜ起きるかというと、「毎日水やりしない場合は、バーク植えでは慢性的に水不足、ミズゴケ植えでは真夏に水不足になる」からです。
そこで、植込み材料を鹿沼土に変えることによって、「(真夏以外は1週間くらいは)生長期でも水切れしない」ようにできて、頻繁な水やりをしないでも済むのです。、

細茎薄葉種の咲かせ方
デンドロビウムが咲きにくかったり、デンファレ石斛の古株の葉が無くなったり、フォーミディブルが二回咲きしてくれないのは、他のバルブがあったり葉が大きくて厚い種類と同じように乾燥させすぎているためではないかと考えました。デンドロビウムの下垂種エピデンドラムも同様で、バンダの落葉も関係あるかもしれません。
そこで、これらの、茎が細くて葉が薄くて小さい種類については、あまり強い日光に当てたり、水やりをさぼって乾かしすぎたりしないように、することにしました。

あとがき暫定版
本やHPを見ると、どれにも同じようなことが書いてありますが、知りたいと思ったことは、いくら探してもみつからないことが多いです。例えば、パフィオの新芽で咲かなかったら2年目に咲くのか、ジゴペタラムの咲かなかった新芽はどうなるのか、などです。ここでは、なるべく体系的な知識を提供し、疑問に思ったことを調べたり、専門家に教わって書いていきます。「易しく、親切に」書くことはしていません。
「洋ラン大学」までは、基本的にどの種類も同じ世話で咲かせる方法が書いてあります。同じ方法で試さなければ、本当に種類により特別な方法が必要かどうか分かりません。大学院では、その上で、種類により変えると確かに効果があることや、特別な方法が必要な場合を検討していきたいと思います。また、基本はなるべく世話を少なく、単純にすることを目標にしています。例えば、液肥をやったり、吊り鉢にしたりなどはしません。「大学院」では、少し手間を増やす場合も紹介します。
このHPではやり方を一通りに絞っています。他の方法の例(温室、ミズゴケ・バーク植え、地植え・周年屋外、素焼き鉢、吊り鉢など)は別の人の試みを紹介したいと思います。
例、咲きにくい種類を咲かせる方法、開花株を毎年維持する方法、など

13.12.8難しい種類の育て方と咲かせ方シリーズ開始

12.20 根を育てる
10.25 株分けを見越した鉢増し
9.30 根の耐湿性
9.3 株分け、鉢増し
8.11 育てにくい種類−バンダ、咲きにくい種類−大明石斛とグラマトフィラム、定期水やり不要を表紙から移動、置き場所−遮光ネットほぼ不要、夏の植替え
8.9 新版開始、作落ちの原因と対策、
2.28 あとがき暫定版、表紙から移動編入
2012.2.19 自生地の様子、単なる再現は下策
2011.3.3 開校、初めに、目次