洋ラン大学院
根を育てる

目次
初めに
色々な根
 太根・中根・細根
根の写真集
根鉢
根の四季
新根と新芽
根を育てる方法
 根を入れる
 土増し
 鉢底近くの横穴開け
 植え替え後の水やり
根鉢
新しい根と古い根
根の虫害

まえがき2012−根張りの良しあし
洋ランで根について語られるのは、殆ど、根腐れをどう防ぐかだけです。
これまでの方法は、自然では空中にある根を植え込み材料の中に入れ、またその植え込み材料自体がミズゴケかバークで使っている内に腐るものでした。その上鉢の中を見ないで水やりするため、根腐れを避けるのが困難でした。
21世紀の方法は、根を薄着にしてやり、植込み時材料を腐らない鹿沼土とし、容器を透明ポットにして中が乾くのを確かめてから水いやりをするので、これまでの方法に比べて根腐れしにくくなっています。
そうすると、次に、根張りの良しあしが見えてきます。また、育ちの良しあしが、殆ど根張りの良しあしで決まっていることが分かってきます。
そこで、本格的に根を育てる、ことを検討できるようになります。ようやく「洋ランを育てるとは根を育てること」になってくるのです。
初めに
根は人間でいえば、消化器か、内臓のようなものでしょう。葉や茎を育てているようでも、実際は根が良く育って健康であれば、よく育って花が咲くし、健康でなければ、生長せず、花は咲かず、次第にやせ細っていきます。
このHPで薦めている「透明容器」の良い点は、植え込み材料の湿り具合が良く見えることが第一ですが、根が見えることは、活用次第では、もっと重要です。

根の育ち方の要因
これまでに言われている代表的なことは、「水やりが十分だと、根を増やす必要が無いので伸びず、ミスが足りないと水をより良く吸収しようとして根が伸びる」、と「鉢が大きいと根を鉢内に一杯に伸ばすまで花が咲かない、小さな鉢では速く咲く」です。
根の育ち方を左右する要因としては以下のようなことが考えられます。
ランの種類、
根の太さや長さなど、根を出しやすい種類とそうでない種類、根が丈夫
温度、
全ての化学反応や、その結果としての生物の活動は、温度が高いほど活発になります。温度が10℃高くなると活動は大体2倍になります。そこで、根の生長もこれが当てはまると考えられます。低温期にはなるべく日当たりを良くしたり、冷たく熱を奪う風を遮ったりして、温度を高くするのが有効です。
植え込み材料、
植え込み材料が適度な湿りが長く続くと根の生長に適しており、湿り過ぎは根の生長を遅らせ、乾きすぎても良くないでしょう。ただし、どの位が適当かは難しい問題です。
植え方
同じ植え込み材料でも、鉢の大きさや植え方で、乾き方などが異なり、根の伸びにも差ができます。
水やり
どの程度に湿らせると良いかは分かっていません。

色々な根

洋ランの根は特殊な構造をしています。他の植物と同じ根は、太くて白い根の芯に細く通っていて外からは見えません。見えるのは根を包んで水分を蓄えるスポンジのような層です。
ランは、世界中に、極北から極南まで、また熱帯雨林から砂漠まで、海岸から高山まで分布し、その結果多くの種類に進化しましたが、根の基本的な構造は大体の種類で同じです。
しかし、太さや長さなどは、種類によって異なります。また、パフィオペディルムのように、外見も他の種類と明らかに異なる種類があります。
太根・中根・細根・特殊根


問題対策
太根
5mm前後
1シンビジウム
3カトレヤ
4コチョウラン
13バンダ
根腐れしやすい
(シンビジウムを除く)
安全植え
カトレヤはバーク(大鉢は大粒)植え
コチョウランは高温期以外は雨除け
バンダはバンダ・ロール(バスケット)
中根
3mm前後
3+ミニカトレア、4+ミニコチョウランやや根腐れしやすい 安全植え
周年20℃前後の室内・広いペットボトル
細根
1-2mm
2ドンドロビウム・ノビル
6オンシジウム
7エピデンドラム
枯れやすい 安全植え
特殊 5パフィオペディルム
セロジネ
根腐れ・枯れやすい 安全植え
鹿沼土植え


根の写真集
根鉢の例
長い間植替えをしないと、根がどんどん伸びて増えて、鉢の内側に一杯になり「根鉢」を作ります。種類による根の特徴が良く見えます。

#5 パフィオペディルム


エピデンドラム
新しい根が横に巻いています。


新五属(普及種)
#6オンシジウム
オンシジウムも根鉢ができていることが多いです。


カトレヤ


グラマトフィラム
鉢増しする前の根鉢の底、新芽は鉢からはみ出して、外に沢山気根を伸ばしています。
  

コチョウラン
根の本数が少なく、隙間が広く開いています。
種をまいてから、鉢増しを1-2回で開花株になっているので、中心に小さい根鉢があることが多いです。

 
シンビジウム
もっとも根鉢が良く発達する種類です。


駿河蘭
太い根が絡み合いかけています。



#9セロジネ
代表種の交配種のインターメディアの大鉢

原種クリスタータのバルブの小さい株



続五属(花物)
#11 デンファレ
高温期には、根元から新しい根が沢山出て、先端の根冠は緑で、どんどん伸びます。「土増し」で覆ってやります。
 


#11+ フォーミディブル
何株か一緒に入手しても、根張りの良い鉢とそうでないのがあります。水不足だと枯れています。
 

#12 キンギアナム
何年も植え替えをしないと、芽も沢山出て根鉢を作ります。

#12+ 大明石斛
何年も植え替えをしないと根鉢を作るだけでなく根が地表に増えています。抜いて土を落とした処。

春に入手した開花株を鉢増ししたら、秋の初めに新根が根鉢を作り始めていました。



パフィオペディルム
パフィオの根は鉢の内側に沿って伸びますが、少ないことが多いです。中の図は発泡スチロール棒の芯入り植え
  

#8 ジゴペタラム




報歳蘭
鹿沼土に鉢増しして、しばらくして根鉢のでき始め


マキシラリア




ミニカトレア
黒ビニールポット植えの苗です。

透明ポリポットで鹿沼土植え、室内栽培、根がどんどん伸びています。



新芽などの根元の新根・土増し
土を被せて、乾きを防ぎ吸水しやすくすると、生長が良くなります。

#2 デンドロビウム・ノビル系
 
#3 ミニカトレア
新芽の根元から気根が出て先の根冠が赤くなっています。


素焼鉢植えやミズゴケ植えで売られていたミニカトレアは、株元の根が露出していました。
 

#8 ジゴペタラム
根元の新根が露出することが多いので、土増ししてやります。



鉢の内側に沿って伸びる新根
植える時にも、根を鉢の縁に付けて、「片むき出し」にしてやると根腐れを防げます。


根冠

ミニカトレア
鉢植えを抜いて一回り広いペットボトルに移したら、元気に新しい根が伸びて乾いている時には白く、先は緑の根冠が1cm程に伸びています。


パフィオペディルム
鉢の底に元気に伸びる根の先端は白い根冠です。


高芽の根

オンシジウム



カトレヤ
左:新芽は鉢の外で根も外です。むきだしだとナメクジに根冠を食われることがあります。
右:根鉢の根は乾燥で枯れかけ、新芽は鉢の外
  

#14 グラマトフィラム

根の四季

植え替えは新根が伸び始めてから、肥料をやるのも根が元気な時になど、根の状態により、色々な世話をします。根が休眠している時に多く水やりすると根腐れが起きます。従って、季節ごとに根の状態がどのように変わるか、根はいつ生長し、いつ休眠するかを知ることは、ランを良く育てるために大事です。

12月の根

植物は温度が5℃を下回ると活動が止まると言われています。12月は最低気温5℃未満の冬日が始まりますが、昼の温度は、15℃近くあり、種類によっては生長をつづけています。また、高温種のコチョウランも、室内の暖かい所にあれば、根冠が緑で活動しています。

新根と新芽

複茎種の春の植え替えの時期は、「新芽か新根が出始めて1cm位になった時が最適」などと言われます。普通には、まず新芽が出て、その根元から新根が出、その一方で親株の根元からも新根が出るというパターンのようです。

根を育てる方法

根を育てるための目に見える方法があります。

根を入れる

コチョウランの根は、鉢から飛び出していることが多いです。一般には「元気な印、自生地ではむき出しなのだから放っておけば良い」と言われています。しかし、「植え込み材料が良ければコチョウランの根は植え込み材料に向かう」そうです。コチョウランは根が少なく、入手した苗は根腐れしていることが多いので、元気な根は植え込み材料の中でしっかり吸水して欲しいです。そこで、暴れている新根を少しでも植え込み材料の方に誘引して潜り込ませるようにします。ミニバンダも、新根は葉と葉の間から出るので、放っておくと空中に伸びてしまいます。そこで、鉢の縁から入っていくようにします。

土増し

植え替えは毎年必要と言うわけではありません。しかし、新根は毎年出てきます。また、高芽からの新根は植え込み材料に届きません。夏に向かって、新しい根が植え込み材料の表面を這って伸びてきます、例えばカトレヤとか、パフィオペディルムです。さらに、元気な苗では、鉢の内側に根が伸びているのが見えます。
これらをどうするかは、これまで述べられたことがありません。これらは、最も新鮮で元気であり、しかも新しく生長するために水と肥料を必要としている根です。そこで、植え込み材料で覆ってやるのが良いと思います。

高芽の新根

高芽の新根はその周りに植え込み材料を盛り上げて、覆ってやります。すると、ナメクジの食害に遭うこともなく、早く吸水を始められて、生長が加速します。

表面の新根

表面の新根に対しては、同じく、覆うように、上から、新しい植え込み材料を足してやります。乾きを防ぐ位の積りです。

鉢の内側の新根

表面の新根が鉢の縁に届いて回り込んだり、鉢の中の根の枝が伸びてきたりして、透明容器では内側に新根が伸びてくるのが良く見えます。元気な苗では夏頃までには、根がたくさん見えるようになります。また、植え替えをしなかった鉢では、根が一杯になることがあります。このような、「片側がむき出しの根」は、若くて元気いっぱいにもかかわらず、十分に吸水できません。
透明の軟質のポリエチレンのポットでは、少し力を入れると、根と鉢の間に隙間を作ることができます。そこで、間に新しい植え込み材料を追加して、新根を覆ってやります。これにより、生長に弾みがついて、苗はますます大きくなり、高温の時期にも水切れが少なくなり夏越しが楽になります。

鉢底近くの横穴開け

「水やりは、鉢底から流れるまでやって、鉢の中に新鮮な空気を入れる」と良く言われます。根を育てるのとはちょっと違いますが、柔らかい容器の柔らかさを利用すると、簡単に鉢底近くに横穴を開けられます。効果の第一は、湿りがちな鉢底近くの乾きが速まって、根腐れから解放されることです。また、第二は、上に近い速さで下まで乾くため、水やり間隔を縮められるので生長が良くなることです。しかし、第三に「底の方の根にも常に新鮮な空気が触れている」ことがあるのではないでしょうか。これらが相まって、根が健康になり、結果的には根を育てることになっています。

植え替え後の水やり

植え替え後は、普通は1週間たってからなどと言われます。しかし、それでは、その間の吸水は止まり、根が乾いてしまうかも知れません。

根鉢


新しい根と古い根


根の虫害

根の虫害とは、余り馴染みがありませんが、「新根の先をナメクジに食べられると1年花が咲き損なう」とも言われます。カトレヤやオンシジウムは、新しい脇芽が地上の少し高い所から出て、新根がその根元から出て空中にある時期があります。その時に柔らかい新根の先をナメクジに食われてしまうと、新芽の生長が悪くなり、花が着かないことがあります。

10.16 根鉢の例
4.9 太根・中根・細根
2012.3.9 まえがき2012
2010.12.11掲載開始
2010.10.6 着手