バークの性質



1 初めに

近年、生産者や趣味家に、洋ランの栽培に主にバークが使われるようになっています。生産者では、以前によく使われていた軽石などに比べて軽いことが普及のきっかけのようで、またどの種類を育ててもミズゴケよりも失敗が少なく平均的によく育つことが決め手のようです。また、ミズゴケよりも劣化がやや遅いので植え替え間隔を伸ばせたり、植え替えの際に前の材料を取り除いたり新しい材料を入れたりの作業が簡単になります。
バークの湿りと濡れ
バーク植えの鉢の中には、他より乾きの悪いものがあります。根の傷んでいる場合が多く、他と同じ水やりをしていると、根腐れしてしまいます。鉢の表面のバークは水やりの直後から乾いています。乾いた鉢に水やりした場合は、大抵バークの粒の表面だけが湿って中は乾いており、表面も早く乾きます。鉢底近くになると、湿りが残っている内に次の水やりをすることになるので、次第に中まで湿っていくと思われます。雨ざらしなどで、完全に中まで湿ると、色は真黒になり、中々乾かなくなります。こうなると、根腐れの恐れや、バーク自体にカビが生えて早く劣化するという問題があります。

2 バークの性質

本HPで用いている材料を比較すると以下のようになります。バークと鹿沼土は粒の大きさで性質が変わり、ミズゴケは固く詰めるかそうでないかで変わります。


バークミズゴケ鹿沼土
最大保水量小(小鉢生育不良)大(大鉢根腐れ)
乾く早さ遅い(絶対量は少ない)早い(割合のみ、水の絶対量は多い)
水弾き大(小粒)大(柔らか植えで減少)
湿りの進行あり(底の過湿の原因)なしあり(底の過湿の原因)
植え込み材料取り除き手間(柔らか植えで減少)
植え込み作業手間(柔らか植えで減少)
カビ・ナメクジ中(湿りが続くとカビ)
劣化中(湿りが続くと早い)早い


3 バークの弱点対策

問題があると言って手をこまねいていないで、対策を考えればかなり緩和されます。

保水量の少なさ

バークは含水率が低いので、小鉢ではすぐ水が無くなってしまい、枯れやすくなります。これには例えば6cm以下の鉢を使わないことです。また粒が大きいと含水量が少ないので、大鉢以外は大粒(10-25mm程度)を使わないようにします。一方発酵バークと言う粉末混じりは、保水量が多すぎ、鉢底に水がたまると根腐れしやすいので、避けた方が無難です。

乾くと撥水性になる

問題
バークはミズゴケでも同様ですが、一旦乾くと水を吸わなくなります。すると、水やりしても苗は水を吸うことができず枯れやすくなります。また、鉢の表面近くは中よりも乾きやすいので、いつでも水を吸いにくくなっています。
対策
鉢全体が乾いて水を吸いにくくなるのは、1週間以上水やりをしなかった場合です。従って、1週間以上水やり間隔を開けないようにします。
乾き気味の鉢を回復させたり、水を吸わせるには、鉢底から水が流れるまででは不足です。少なくとも、鉢の表面まで水が溜まってバークが水に浸かるようにする必要があります。これでも、完全に濡れた状態にはなりません。
鉢の中が見えないと、乾いているかどうかが分からず、水やりしても濡れたかどうかが分かりません。従って、透明鉢を用いるのが安全です。
5mm以下などの小粒で植えると、特に中への水の通り道がないため、中は湿らせることができず、枯れが起きやすくなります。従って小粒は使わない方が安全です。中粒で少し大きめの鉢に植えます。
高温期には、長時間雨ざらしにすると、再び中まで十分に濡らすことができます。ただし低温期には雨ざらしはは病気や根腐れなどの原因になるのでこの方法が使えません。
水やり間隔が長くなる原因の一つは、鉢の表面近くは乾いているのに鉢底近くがいつまでも湿っていることです。鉢底近くに横穴を開けて、鉢底近くの乾きを早くすると、水やり間隔を短くでき、鉢の上側が長期間乾いたままになるのを避けられます。

劣化を防ぐ

バークは過湿が長く続くと、次第に腐ったり、カビが生えたりして、植え替えが必要になります。過湿になりやすいのは鉢の中心部や鉢底近くです。中心は発泡スチロール芯を入れ、鉢底については近くに穴を開けることにより、他の場所と同じように早く乾かすことができるため、劣化を遅らせることができます。

中粒の単用

以上により、種類と苗(鉢)の大きさにかかわらず、バークの中粒だけで、ほぼ全ての苗を植えることができます。透明軟質ポリエチレンポットを用い、鉢が大きい場合は、スチロール芯を増やし、鉢底近くの横穴を多く上まで開けることにより、同じ扱いができます。

3 バークの過湿の見つけ方

問題があると言って手をこまねいていないで、対策を考えればかなり緩和されます。

10.10 問題点と対策を統合、過湿の見つけ方
2010.10.8掲載開始、バークの湿りと濡れ