洋ラン大学院
複茎種の株の成り立ち


はじめに
洋ランの大部分は複茎種で、花の咲いた茎の根元から新しい芽が出て1年間かけて親株と同じ大きさに育ち次の花芽を着けて咲かせます。
従って、花を咲かせるためには、新芽を出させ、大きく育てる必要があります。
開花株を買っても翌年以降に咲かないのは、大抵新芽が十分大きくならないためです。新芽は自力で育つのではなく、親株から養分を貰って育ちます。従って親株が大きくないとそれだけ、花が咲きにくくなります。
生産者は、苗を育てたら、できるだけ早く売りたいので、やっと花の咲く大きさになった株が、売られています。しかし、それを、環境が異なり、育てるのに不慣れな家庭で育てると、親株が小さいため、新芽は親株以下にしかならず咲かないことが多いのです。
ですから、洋ランが咲かないのは、育て方の良しあしより、苗が小さいことが原因であることが大半です。
家庭園芸では、株が大きいほど、咲きやすくなります。
そこで、複茎種が、どのように大きくなり、どんな株になっていくかを、主にカトレヤを例にとって紹介します。

カトレヤの株の生長

1 実生から初花まで(初花株)

洋ランの多くは、実生で殖やされるか、新しい種類が作られます。
まず、芽が出て、最初は1本の茎が育ちます。1年後か半年後位に、その根元から新芽が出て、2本目の茎が育ちます。この場合、最初の茎は小さいので、2本目の方が大抵大きくなります。次も同様ですがさらに大きくなるのが、普通です。
これを繰り返している内に、株が十分な大きさになると、蕾が付き、咲きます。これが初花です。
ミニカトレアやカトレヤの、余り生長が旺盛でない種類はこの段階で出荷されることが多いようです。

左から順に、年々株が大きくなり、最後の開花中の株が最も大きく、標準的な親株の大きさに達したと思われます。一つ左の茎にも花の咲いた跡が見えます。バルブは全部で6本

2 新芽を大きく

上の写真のように、新芽が一つの親株から一つしか出ないと、初花の後も、どんどん大きい茎が出るばかりです。
しかし、初花やその直後の株を家庭に持ってきて育てると、鉢が小さく水切れしやすかったり、慣れない内や、植え替えや株分けをしてしまうと、新芽は却って小さくなってしまい、咲かなくなってしまうのです。
従って、慣れないうちは、鉢増しをして、水切れさせないように大きく育てるようにします。新芽が大きく育てられるようになると、花が咲く可能性がでてきます。

3 匍匐茎の分岐(大株)

一つの親株から2つ芽が出たり、古い株から芽が出たりすると、そこから同じように横に広がっていきます。匍匐茎が二股に分かれて、毎年2つ新芽が出ます。
新芽が一つだと、何かの拍子で咲き損なうことがありますが、二つ以上あると危険が分散して、咲きやすくなります。また、このような株は全体として体力があるので、それぞれの茎も大きくなり咲きやすくなると共に、たまに水切れや、一部に日焼けなどがあったとしても、抵抗力があるため、咲き損ないが少なくなります。
特に花が咲いた茎からは、新芽の出るのが遅れがちなので、1本しかないと翌年は咲き損ない、いわゆる1年おきの開花になることがありますが、大株になると、咲き損なったり、開花期以外に出た茎から新芽が早めに出るので、それを補うことができます。
バルブが3本以上になったら株分けを、という本がありますが、花が十分咲かない株を増やしても遠回りになるだけで、仕方がありません。

匍匐茎が分岐し始めた大株、右から左へ順に新しい茎ほど大きくなり、奥の新芽が開花、左は分岐した匍匐茎からの新芽、バルブは全部で7本

3 群生株(巨大株)

ここで株分けしないで、さらに広い鉢で育てると、方々から、また株ごとに芽の出る時期がずれたり、花の咲いた茎からは遅れて新芽が出たりして、1年に2回咲いたりするようになります。
また、このような群生株が鉢に一杯になったら、株分けの必要が出てきますが、匍匐茎を適当に二分するだけにすれば、痛みがなく、翌年も咲きます。

上の株の2年後、匍匐茎は3つ又に分かれ、それぞれからさみだれ式に新芽が出て、適期のものが咲きます。バルブは全部で16本。もう、株分けが必要です。飾るために、透明ポット植えをプラスチック鉢に入れています。

2011.3.1開始