洋ラン学園
洋ラン病院
病気対策も4段階で
早期発見/無農薬栽培でも育てられる
目次
1 初めに−病気対策も4段階で
2 主な病虫害と対策、小中高校
3 病気の治療と予防
4 害虫の駆除と予防
5 無農薬栽培
冷害−冷害・霜害・凍害
参考
1 色々な病虫害
2 ウイルス、細菌、カビ
1 初めに−病気対策も4段階で
洋ラン育ては、うまくいかないと、楽しむどころか、病気と害虫の対策に追われ、しかも大事な苗が枯れていくということになりかねません。洋ランの苗のいくつかは、必ず、病気になったり、害虫にやられたりします。どちらも予防が重要なのはいうまでもありませんが、病気や害虫にやられたときに、必ず助けられるようにしたいものです。
一方で、本を見ると、病気と害虫の予防や対策のために、年中殺菌剤と殺虫剤をまくように書かれています。品評会に出すのでなく、家庭で花を楽しむのに、丈夫な種類や、殺虫剤を使わなくても駆除できる害虫にまで薬を掛ける必要はありません。また、病気にかからぬよう健康に育てるのは世話する人のつとめで、簡単な対策だけで多くの病虫害は防ぐことができます。年中薬を撒いてわずかな苗を助けるのと、農薬を用いずに育てにくい種類を失うのとどちらを選ぶかでしょう。このHPでは、基本的に無農薬栽培としています。
本には色々な種類が色々な病気にかかり、害虫が着くように書かれていますが、園芸店で手に入る種類は、丈夫な種類が多く、それほど心配することはありません。
以下11.28追加
病虫害対策も、基本的なものから退治していく段階性を取ると効果が大きいと思います。まずは、根腐れと、水切れによる枯れを防ぐことが大事です。めどがついたら問題になるのは日焼けでしょう。それを超えるとカビ病が残ります。日焼けはカビ病の発病個所になりやすいので、日焼けを防げるとカビ病も減ります。できれば、カビ病を無農薬で予防できると良いです。細菌は稀で、ウイルスには効く薬がない(伝染を防ぐだけ)とされています。
石の華さんのHPで指摘されているように、同じような症状でも異なる病気であることがあり、本やHPによっては間違って書かれていて、その結果治らないということも多いようです。特にカビの病気に細菌用の、反対に細菌性の病気にカビ用の殺菌剤を使うと効果がないばかりでなく害になる場合もあるそうです。正しい診断が必要なようですから、専門家の情報を知る必要があります。細菌性の軟腐病には独特の異臭があるので大体区別がつきます。
段階 |
| 原因 | 症状 | 対策・予防 |
1 | 小学校 | 内因性 | 根腐れ・枯れ | 植え方・水やり・置き場所 |
2 | 中学 | 外因性 | 日焼け | 遮光・水やり |
3 | 高校 | 菌(カビ) | 黒点・芽腐れ・炭疽病など | 雨除け、日焼け防止 |
4 | 大学 | 細菌 | 軟腐病(異臭) | 予防 |
害虫は、カイガラムシ、ハダニ、ナメクジが三大悪役で、スリップス、アリも有害です。
2 主な病虫害と対策・小中高校
11.27追加
園芸店で手に入る割に丈夫な種類を、なるべく日当たりを良くして、根を丈夫に健康に育てていれば、それほど、病気や害虫に困ることはありません。ここでは、種類ごとに病気を網羅し、完全退治することは行っていません。主な病気はわずかで、ランの種類によらず起き方は共通しており、退治の仕方も共通の方法で行えます。まず、基本的・普遍的なものを防ぎ、残ったものを減らしていくことを想定しています。主な病気や害虫を説明します。
小学校・内因性の病気
1 根腐れによる枯れ
洋ランで最大の問題です。ただし、原因は、入手した株が既に根腐れしていることが最も多いです。コチョウランが特にそうですが、夏前後に入手して、新しい根を出すことができれば、助かります。次に多いのは、根が休眠している寒い時期に入手して、慣れない水やりにより根を傷めてしまうことです。これも、暖かく、根が元気になってから入手することにより防げます。次の主な原因は、鉢の表面の乾き加減を見て水やりをすることです。中は乾いてないことがあり、根が弱っている株ほどそうなりやすいため、根腐れしやすいのです。これは、本HPで勧めている、透明容器に鉢替えして、中の乾きを見ながら水やりすると激減します。それでも、乾き自体が悪い寒い時期などには根腐れの危険があります。これも、本HPで勧めている「芯入り植え」にすることにより、鉢の上から下まで早く乾くようになって、激減します。
2 水切れによる枯れ
根腐れの次に問題となるのが、水切れによる枯れです。特に根腐れしないように小さな鉢に植え、水やりを控えると、高温期には水切れして、特に小さい苗は枯れてしまいます。
これは、根腐れしにくい「芯入り植え」にして、根腐れの心配をせずに水やりすることにより、激減します。
中学・外因性の病気
3 日焼け
根腐れ、枯れが無くなると、最大の問題は日焼けです。大きく育て、花を咲かせるにはなるべくtっす良い日に当てた方がよいのですが、つい、強すぎて日焼けさせてしまいます。また、遮光をしたつもりでも日の動きのために一時的に直射日光が当たってしまったりしても起きます。
コチョウランは日焼けしやすく、しかも葉が少ないので被害が甚大です。このような種類だけは、初めから直射日光の(絶対)当たらない場所に置くとよいでしょう。
丈夫な種類、葉が多くてどんどん出る種類は、多少の日焼けは致命傷にはならないので、目をつぶることにします。
高校・カビによる病気
色々ありますが、一部を除いては致命傷になるものではなく、新芽に限られたり、低温期に限られたりです。
日焼けや葉枯れなどの患部から発生することが多いので、日焼けを防ぐと減ります。
4 黒点病
病気らしい病気として、最も多いのが、葉に黒い点がでて、葉が黄変し、ひどい場合には落葉するものです。丈夫なデンドロビウムでは唯一と言って良い病気ですが、ジゴペタラムなどにも出ます。一般に低温で出ると言われています。寒くなったら早めに屋内に入れたり、雨ざらしを避けると予防でき、農薬を使うのであれば、夏の間に、カビ用の殺菌剤を散布します。この病気は、致命傷になることは殆どありません。
雨ざらしのジゴペタラム交配種に出た黒点(11月27日)
5 茶枯れ
パフィオペディルムの新芽は良く枯れることがあります。セロジネでも見られます。また、ジゴペタラムの新芽はなりやすいと言われます。やはり、カビが原因です。小さい株や新芽は助からないことが多いですが、大きな株や親株は助かるので、致命的ではありません。
6 芽の黒腐れ
カトレヤなどで、出始めの脇芽が黒くなって枯れてしまいます。これも、低温と過湿で出やすいカビによる害です。親株が痛むことはないので致命的ではありません。
7 炭疽病
コチョウランは、洋ランの普及種の中では、最も病気が多いようです。炭疽病は、大きな黒い点が葉に多数現れ、ひどくなると葉が黄変して落葉します。また、他の葉や、周りの株に伝染します。生長点の新葉に移ったりして、致命傷になることがあります。
夏以外の時期に雨ざらしにするとかかりやすく、ミニコチョウランよりも大型種の方がかかりやすいです。原因はカビですが、大抵は感染しており、日焼けなどで痛んだ処から発病することが多いようです。
従って、日焼けさせないことは炭疽病の予防のためにも大切です。
これは、雨ざらしにしないこと、カビ用の殺菌剤を散布することで予防します。また、罹った場合は、黒くなっている部分を切り取ります。
雨ざらしのコチョウランに出た炭疽病の黒点(11月5日)
病原による病気のまとめ
この他に細菌性とウイルス性の病気があります。
細菌性の病気で起こりやすいのは、軟腐病で、コチョウランの葉が黄色の半透明になって異臭を放ち腐ります。治りにくいですが細菌用の殺菌剤があります。
ウイルス性の病気は、昔からバイラス病と言って多くの植物にある、斑入り状になる病気で、薬がなく、株分けに使った鋏や、害虫を介して伝染します。
カビ・細菌による、園芸店で入手できる丈夫な種類に起きる主な病気をまとめると下の表のように簡単になります。対策も単純です。
致命的な病気だけ処置するとすれば、コチョウランの炭疽病だけでしょう。周年室内栽培や、雨除け栽培なら出にくいです。
芽枯れ・芽腐れは、新芽の濡れや湿りを減らすだけで減り、放っておいても子株でなければ芽が減るだけで済みます。
全種類の全株に毎月定期的に散布するのはやめる
病気の発生しやすい種類の、発生しやすい新芽のある株の新芽に、発生前にだけ予防散布する
1 カビによる芽枯れ(葉枯れ)、黒腐れに対しては、新芽にのみ殺菌剤を掛ける
2 炭疽病は、雨ざらしなら、梅雨入り前と秋雨入りに、殺菌剤を掛ける。発生したら早期に切除し株全体に散布する
3 軟腐病は起きたら、細菌用殺菌剤を掛けるが、効果は薄い
| 属 | 病気 | 病原 | 発生季節 | 散布 |
1 | シンビジウム | − |
|
|
|
2 | デンドロビウム | 黒点 | カビ |
|
|
3 | カトレヤ | 芽腐れ | カビ | 初夏 | 予防 |
4 | コチョウラン | 炭疽病 | カビ | 梅雨・秋雨 | 予防・患部 |
|
| 軟腐病 | 細菌 |
| 殺菌剤 |
5 | パフィオペディルム | 芽枯れ | カビ |
| 予防 |
6 | オンシジウム |
|
|
|
|
7 | エピデンドラム |
|
|
|
|
8 | セロジネ | 芽枯れ | カビ |
| 予防 |
9 | ジゴペタラム | 芽枯れ | カビ |
| 予防 |
10 | バンダ |
|
|
|
|
11 | デンファレ |
|
|
|
|
12 |
|
|
|
|
|
13 | ミニバンダ |
|
|
|
|
14 | グラマトフィラム |
|
|
|
|
15 | デンドロキラム |
|
|
|
|
16 | セッコク |
|
|
|
|
17 | フウラン |
|
|
|
|
18 | シュンラン |
|
|
|
|
19 | エビネ |
|
|
|
|
20 |
|
|
|
|
|
21 | ミルトニア |
|
|
|
|
19 |
|
|
|
|
|
害虫
1 カイガラムシ
洋ランで一番厄介な害虫です。入手した株についていることが多く、入手するまでは洋ラン園で薬で抑えられていますが、家庭でしばらくすると、根元などに隠れて生き延びた親虫から繁殖してきます。なるべく雨ざらしにすると子虫は育たないので目立ちません。見つけたら少ないうちはピンセットなどで取り除きます。多い場合は、強い流水を当てると除くことができます。殺虫剤は、幼虫の時だけしか効果がなく、株により繁殖期がずれるので、絶滅できず再発します。いくつか種類がありますが、いずれも外国産なので、新しい苗と共に持ち込まなければ、一度無くなれば再発しません。
2 ハダニ
野菜や雑草につくハダニが、外から飛んできて繁殖します。葉が白っぽくかすれたようになり、衰弱します。これも、高温の乾燥器に繁殖しますが、雨ざらしにすると防げます。ただし、外から来るため、再発は避けられません。
根腐れ株の助け方(のレシピ)
洋ランを育てていて、一番頭が痛いのが根腐れです。予防が大事ですが、中には根腐れになったり、入手した時に根腐れしていたりします。色々な方法が提案されていますが、「助からないことが多い」のが実情です。そこで、考えてみることにしました。
1 助かる株と助からない株
根腐れはなぜ助からないか
根腐れがひどくなると、進行が止められないために枯れてしまうと考えます。しかし、実態は、根腐れがひどくなると、根が吸水できなくなって、地上部が萎れて枯れるようです。「根腐れした株はポリ袋に入れておく」というのも、脱水・乾燥を抑える方法と考えられます。
根腐れはどうしたら助かるか−地上部に元気が残っている
反対に、根腐れから助かるのはどういう場合かというと、大きなコチョウランで、根腐れはしているけれども、大きな葉が残っていて萎れていない場合、暖かくなるまで持たせると、助かることは多いです。この場合は「暖かくなると残っていた萎れた根が元気を回復」します。つまり、地上部に体力が残っていると、かろうじて残っていた根が再生するのです。かろうじて根が残っていたために地上部が弱らなかったともいえるのですが。
従って、根腐れが助かるかどうかは、根ばかりではなく、地上部に注意する必要がありそうです。
2 助け方のレシピ
地上部に元気が残り、根元に元気な根が残っている場合−「根の保湿」
低温期の場合は、何とか暖かくなるまで維持します。冬知らずにできれば冬でも同じことです。
吸水させることが大事です。元気な根は根元近くだけにしか残っていないことが多いですが、そこがむき出しになっていることが多く、吸水できません。根元近くの根を植込み材料で覆って、「根の保湿」をしてやることが大事です。
根腐れしている鉢は、根腐れの進行を恐れて「乾き気味」にしがちですが、これでは
地上部を衰弱させることになります。
地上部の萎れを抑えるためには、苗の上からポリエチレン袋を被せて「
地上部も保湿」するのは有効と思われます。
根腐れ株に一番よく出会うのは大型コチョウランの場合です。
(1)半分くらいの根が元気で、ミズゴケ植えで、ミズゴケが新しい場合、寒い時期
寒い時期なら、過湿による根腐れをさける為に、広めのペットボトルに移すのが安心です。暖かく冬知らずにしてやると、週に2回水やりが必要なくらいです。根元の表面に元気な根が露出していることが多いので、ミズゴケを被せてやると回復に良いでしょう。
図はミニカトレヤの例ですが、根が伸びています。ミズゴケを被せました。
(1)半分くらいの根が元気で、ミズゴケ植えで、ミズゴケが新しい場合、暖かくなったら
透明ポリポットに鹿沼土で重ね着鉢増しします。
3 病気の治療と予防
3.1 根腐れ株を助ける
根腐れは、別のところにも述べたように、開花株を入手した時になっている場合が最も多く、低温期の入手や植え替えで健康な株を根腐れさせたり、鉢内の過湿や、高温期から低温期に移るにつれて乾きが遅くなるのに気付かずに同じ水やりを続けたりしておきるのがそれに次ぎます。
(1) 根腐れに気づく
助けるのに最も大事なのは、早く根腐れに気づくことです。病気に早期発見が必要なのはランでも同じです。透明ポット植えは、そのための最も有効な方法です。
(2) 根腐れ株の植え替え
根腐れ株は、大抵植え込み材料の状態が悪いために起きています。そのままにしておくと悪化するばかりです。根を薄着にする、このHPでの標準の植え方は、根の過湿を抑え、根の周りの通風を良くするので、根腐れの進行を抑え、健康な根の発根を促すのに有効な方法です。透明ポットに代えれば、植え込み材料の乾きを確かめてから水やりできます。
(3) 支柱立て、鉢底の穴を増やす
根腐れ株は大抵グラグラしています。根が植え込み材料に馴染まないと、吸水できずに衰弱します。従って、支柱を立てて、ぐらつかないようにすることは大事です。
標準植えでも、根腐れすることはあります。また、根腐れしている株は標準植えにしても、他の鉢より乾きが遅くなって、同じ水やりをしていると根腐れが進行する恐れがあります。乾きが遅いようなら、鉢底近くの横穴を増やしたり、大きくしたりします。健康な鉢と同じくらい早く乾くようになれば、根腐れの回復に役立ちます。
(4) 隔離と静養
根腐れ株は、十分水を吸うことができないため、強い日光や、高温に対して弱く、衰弱します。そこで、健康な根よりは日光が弱く、風通しの良い所に置いて、静養させることが大事です。苗をビニール袋で覆って、蒸散を抑えることも良く行われています。
3.2 日焼け株を助ける
根腐れは、別のところにも述べたように、開花株を入手した時になっている場合が最も多く、低温期の入手や植え替えで健康な株を根腐れさせたり、鉢内の過湿や、高温期から低温期に移るにつれて乾きが遅くなるのに気付かずに同じ水やりを続けたりしておきるのがそれに次ぎます。
3.3 枯れかかった株を助ける
高温で根の出やすい時期には、株を保湿して体力を温存し根が出るのに期待します。
3.4 カビ性の病気の株を助ける
カビ性の病気は、低温過湿期に起きやすく、また高温期に生長点や新芽が水やり後に濡れているとかかりやすいと言われています。低温期は風通しを良くし、水やり後も風通しを良くして早く乾かすようにすれば、殆どかからず、普及種は農薬を使わなくても大体育てられます。
3.5 細菌性の病気の株を助ける
万一かかったら、薬剤はカビ用と異なることに注意します。
3.6 ウィルス性の病気
いわゆるバイラス病は治療薬がないとされています。最大の原因は、株分けなどで、刃物などを介して株から株へうつることです。刃物は極力使わず、折取るようにしましょう。病気の株と葉がこすれあtったり、古い鉢などからも移るようで、家庭で数年育てると多かれ少なかれかかると言われています。病気の株を見つけたら他にうつさないためにも処分するしかないようです。
4 害虫の駆除と予防
カイガラムシは、外来種なので、苗と共に持ち込まなければ、発生しません。また、親虫が隠れいていると年に数回発生しますが発生直後の目に見えな位小さい時だけ殺虫剤が効きます。マルカイガラムシは手で取るようにします。コナカイガラムシは強い流水を当てれば落とせます。どちらも雨ざらしでは増えにくいので対策になります。
ハダニは、周辺にいるものが飛来するので駆除してもまた発生します。こちらも高温乾燥期に発生・増殖します。雨ざらしにしておくと駆除できたり増殖を抑えられます。殺虫剤に抵抗性が付きやすいので、異なる薬剤に替える必要があると言われています。
特にカイガラムシ類は株が弱っていると繁殖するので、株・特に根を健康に保ち、風通しを良くするのが一番の対策です。
ナメクジは、葉や蕾を食べて厄介で、冬に屋内に取り込む時に一緒に入り込みます。雨や湿った日や夜に、見つけ次第駆除し、鉢底穴からの侵入を予防します。隠れている物には薬剤が必要です。ミズゴケ・バークの順につきやすく、鉢の中に隙間があるとい場所になります。鹿沼土などに植えた場合は少なくなります。
アリは、バーク植えで隙間が広いと巣を作ります。鉢ごと水に長時間つけると追い出すことができます。薬も有効です。
カイガラムシ駆除の参考、サボテンのネジラミの退治
水攻め法もあります。
てっちさん
綿虫の駆除薬剤は カルホス または スプラサイド が良いでしょう。
バケツ等に1000倍に希釈した液を作ります。つまり10リットルの水に10ccに農薬水和剤を入れてよく攪拌します。此れで1000倍希釈液が出来ます。
植物の土が落ちないよう用土の表面にちり紙などで覆いガムテープで鉢ごとグルグル巻いてしまいます。
先ほどのバケツの液に逆さにして植物を鉢の部分だけ残して全部浸します。
2?3秒してから引き上げすぐに清水を満たした別のバケツに同じように入れて振り洗いします。(此れでどんな隙間に隠れていても逃しません。)
念のため生長点(ロゼットの中心)にたまった水をふきとばし、ガムテープ、チリ紙を取り去れば作業終了です。
私は秋、晴天の日、外に出してある多肉植物サボテンは温室に取り込んでから、必ず全植物を上記の農薬にアブラムシに(マラソン)ダニ類(エーカロール)など農薬混合液を作り、害虫を温室に入れないため。100リットルのポリ樽に3杯の薬剤を家庭用ふろ桶ポンプにホースをつなぎ、ハス口で植物の頭からザーザー掛けます。
こうすれば鉢の中のネジラミもサボテンの谷に潜むダニ類も、温室の土中に潜む害虫も、全滅です。動力噴霧よりも的確です。
ただし エケベリア だけは農薬に弱く 柔らかい生長点に薬害が出ることがあるので、貴重なものは水道水で流します。
上記2種の農薬は劇物扱いですので購入は印鑑が必要です。
カイガラムシやネジラミ(実はカイガラムシの仲間),それからアカダニの被害をなくす方法の一つ がこれだと思っています。私の栽培品にはほとんどこれらの害虫がいません。被害が拡大してか ら対処するのではなく,芽のうちに摘んでおくことが大切だと思います。一番効率がよいのは鉢抜 きして根を整理したあとに,薬液にサボテンごとつけてしまうことです。これならば隙間に入った害 虫も逃げ場がありません。つけておく時間はだいたい数分間でよいと思います。ここで使う薬剤 は,『アクテリック乳剤』(殺虫剤)です。別に他のものでもかまわないと思いますが,今のところこれ を使って失敗したことはありません。また,実生苗や牡丹類にはさらに『ベンレート』(殺菌剤)を入 れています。
木酢液の原液程度の消毒で消えます。
5 無農薬栽培
このHPでとりあげている種類は殆どが強健種で、わりに病気にかかりにくく、害虫にも強いです。冬には室内に入れて同居することから、殆ど農薬を使わないことにしています。カビに依る病気は一部の種類の幼苗や、出始めの新芽しかかかりません。カイガラムシやハダニは雨ざらしにしていれば増えません。従って、殆ど問題はありません。
1 減農薬栽培−予防の特に必要な病気と方法−
最初から完全無農薬栽培を目指すのでなく、予防として毎月散布することをやめることから始めましょう。ここでは、特に掛かりやすく、致命傷になる可能性のある種類と病気をとりあげていくことにします。大体がカビによる病気です。水やり後や雨で湿ったままにしないようにする、風通しを良くすることが大事なようです。以下に示すうちで、コチョウランの炭疽病とパフィオの枯れは、予防的散布が有効かもしれませんが、それ以外は病気と共存するつもりなら、農薬は不可欠ではありません。
コチョウランの炭疽病
コチョウランの炭疽病は、暑い時期以外に雨ざらしにすると発生しやすく、早期に処置しないと致命傷になり、伝染しやすいので、気をつけます。
発生した場合のみ、早期に患部を切り取って伝染を防ぐと共に、カビ用殺菌剤を散布します。コチョウランだけは予防散布をしてもよいでしょう。
パフィオペディルムの茶枯れ(芽枯れ)
パフィオペディルムは新芽などが枯れることがよくあります。低温多湿期のカビや、水やり後に葉の間や芽に水がたまったままになっていることが原因のようです。大きな株ほど抵抗力があるので、幼苗でなく大きな株を育てる方が安全です。
ジゴペタラムの新芽も、枯れやすく、葉が巻いて水が溜まりやすいので、早く乾かすのが予防策と言われています。気がついてからカビ殺菌剤を撒いても間に合わないことが多いです。これも、予防的散布が気休めになる一例です。
カトレヤの芽の黒腐れ
カトレヤの新芽が黒く枯れてしまう病気です。これも、カビによるものらしく、水遣りや雨で湿っていることが原因のことが多いようです。乾かすこと、風通しを良くすることが大切です。親株が罹患することは少ないので、新芽に目をつむれば、農薬は使わないで済みます。
ジゴペタラム・オンシジウムの黒点病
ジゴペタラムは黒点病が出やすいとされ、葉の枚数がやや少ないため影響が他の種類よりは大きいです。これも、秋口から雨に当てないようにすると予防できます。葉数が減るのを我慢すれば、農薬は使わなくて済みます。
オンシジウムは寒い時期に葉に水をかけると黒点が出やすいそうです(yorantaroさん)
日焼け
日焼けは正しくは高温のやけどのようです。葉の温度が60℃になると日焼けするとの報告があります。
種類によって抵抗力に差があり、シンビジウムが最も強く、デンドロビウムはそれに次ぎ、コチョウランは最も日焼けし易い部類に入り直射日光はもってのほかです。
葉の形で言うと、葉が薄くて水分が少ないと、同じ日射でも温度の上昇が大きくなるので日焼けしやすいと思われます。
若葉の日焼け
春に室内から屋外に出すときは、徐々に日にならす必要があります。
特に若葉、冬の間に「洋ラン天国」で伸びた、は日焼けしやすいようです。
3カトレヤ
若葉の日焼け、1日だけ
キャンディータフト、周年室内のせいもあるでしょう。右:若葉ではないが昨年6月開花の脇芽
7ジゴペタラム
冬芽の伸び、若葉の日焼け
室内でどんどん芽が大きくなりました。
しかし、日光不足で育ったためもあるのか、新葉ほど日焼けしやすいようです。
新芽は雨で腐りやすく、ジゴペタラムは注意が必要です。
15 デンドロキラム
若葉の日焼け
冷害
冷害・霜害・凍害
洋ランは比較的低温で根の過湿状態が続くと寝腐れを起こします。それ以外に低温による害には以下のような段階があります。
洋ランは主に亜熱帯産の植物なので、温帯のわが国では冬には寒すぎて、屋外では色々な害が出ます。
熱帯産植物の中には10℃以下では枯れてしまう植物があり、その理由は細胞膜を作っているたんぱく質が壊れてしまうためと言われています。
グラマトフィラムは、園芸店で売られている洋ランの中では寒さに一番弱く、気温が10℃以下まで屋外にあると葉が黄色くなり、後でバルブが腐って全部枯れてしまうことがあります。
洋ラン学園では他の種類は亜熱帯産から温帯産まで、いわゆる高温種から低温種まで、霜が降らないうちは屋外に置いています。(ミズゴケ植えのバンダ類を除く)
気温が2℃前後になると地表の温度葉0℃以下になり霜が降りるとされています。霜が当たると、その箇所は枯れて白くなるようです。
シンビジウムやデンドロビウムで、中国産の金稜辺や日本産の石斛と交配した小型種は、霜にも耐えられる可能性があります。しかし、最低気温がー3℃程度になると全部が凍害に遭いバルブなど枯れてしまいます。根が元気に残っていると春に芽が出てきますが、親株が無いため開花するほど大きくなりません。
| 最低気温 | 地表温度 |
|
|
|
熱帯産種 | 10℃ |
| 冷害 |
葉が枯れる
全体枯れ | グラマトフィラム |
亜熱帯産種 | 0℃ | -2℃ | 霜害 | 葉が白く枯れる | 全般 |
温帯産種 | -3℃ | -5℃ | 凍害 | 葉・蕾・バルブカが茶色く枯れる |
シンビジウム
セッコク系デンドロビウム |
冷害
気温10℃以下で葉が黄色くなって落葉 グラマトフィラム 2011年11月下旬 右:葉茶枯れ12年10月末
軒下で零下になって霜害
デンドロビウム
シンビジウム
軒下で零下5℃になって凍害
霜除けの薄いネットを掛けている処 左11年2月上旬 右:12年1月下旬、雪
茶色く溶けたように凍害のシンビジウム
左:シンビジウム 右:デンドロビウム
凍害(高温種)
高温種の若い芽は、低温に遭うと零下にならなくても
枯れてしまいます。親株は葉が枯れる位で大丈夫です。
左:エピデンドラムの新芽、右:グラマトフィラムの新芽
霜害
初霜が降りるまで屋外にあったデンドロビウムやキンギアナムの葉が白くなってしまいました。深い軒下に置いて、ネットを被せておけば被害は防げます。
左:デンドロビウム 中:キンギアナムとスペシオキンギアナム(大型)、右:大明石斛
6 色々な病虫害
7.23-追加
主な病気や害虫をもう少し詳しく説明します。洋ランの病気は、主にカビ起因のものと細菌、ウィルスによるものに分けられます。根腐れや枯れなどの生理障害は薬では治りません。病原体による物は大半がカビが原因で、細菌によるものはわずかです。またウィルスには有効な治療法はありません。
カビによる病気と細菌による病気の薬は全く異なり、反対に用いると有害なことさえあるそうです。本などでは取り違えられていることがあり混乱していますし、見かけは良く似ている場合も有り、正しい診断が不可欠です。
詳しくて写真の多い
石の華さんのHPがとても参考になります。
http://www15.plala.or.jp/ishinohana/troble/troble.html
ウィルスの専門家である全日本蘭協会の田中利典会長の解説は、俗説の誤りを糾し、正しい知識と対策を教えてくれます。
パフィオペディルムの病障害とその予防・治療。
http://www.orchid.or.jp/orchid/research/tanaka/index.html
ハダニについても日本パフィオペディルム研究会のHPに会員の山家弘士氏による解説があります。
パフィオに寄生するハダニとその防除方法
http://www.orchid.or.jp/orchid/society/paphio/news_2002_1115.htm
1 病気:
病気は、生理障害、カビ性、細菌性、ウィルス性の4つに大別できます。カビや細菌は弱った株に起きやすいので、生理障害を予防したり、回復させるのが、全体に有効です。カビと細菌にはそれぞれ別の薬が効きます。
園芸店で入手できるランは大半が大抵丈夫です。
生理障害、カビや細菌、ウィルスによらない
根腐れ
大株のコチョウラン、カトレヤ、オンシジウムなどの開花株を園芸店で入手すると、鉢から抜いてみると、一部または全部の根が茶色く萎びていることがあります。シンビジウムやミニ洋ランでは少ないです。また、家庭で育てていても、調子の悪い株を抜いてみると、色々な種類で同様なことが見られます。これは根腐れです。
根の枯れ
コチョウランの大株では、鉢の表面から根が飛び出していることが多く、その中には白っぽく、細く萎びている物があります。これは、乾燥による根の枯れです。
育てている株の中にも、水を控えめや、小さすぎる鉢に植えられている場合、夏に水不足が続いた場合などに、葉が萎れることがあります。株がぐらぐらして、抜いてみると根が無くなっていることがあります。
葉の日焼け
日焼けに強い種類でも、弱い種類でも、直射日光に当たると、日に面していた処が黄色くなって、次第に黒ずんできます。これは日焼け、実際には、高温による葉焼けです。
葉先の枯れ
シンビジウムの葉先が枯れることが良くあります。水不足や冷害が主因と思われます。
下葉の落葉
コチョウランやパフィオペディルム、そしてバンダ類などは、下の方の葉が黄色くなり落葉することがあります。
なぜでしょうか。
コチョウランやバンダ類は単茎種で、生長点から新しい葉を出して上へ上へと伸びていきます。根は下の方の葉と葉の間から出てきます。この根は出たところより上の葉へしかつながっていないと思われます。下の方から出て古い根が、弱ってくると、その根元の直上にある葉へは養水分が届かなくなって弱ってしまうと思われます。根の寿命がきた場合は、葉の老化としてやむを得ないと考えられます。
植え替え後の落葉
植え替えの直後に、コチョウランやバンダ類の下葉が黄色くなって落葉することがあります。これは、根や葉の老化に依るものではなく、植え替えに依って一次的に根の吸水が落ち、葉の蒸散は減らないと起きると思われます。根の吸水力が元々起きている低温期や、蒸散量の多い真夏などの高温期に、植え替えをすると、このようなことが起きがちです。慣れないうちは、植え替えはしないで、必要な場合は根に手を加えない鉢増しにした方が良いのはこのためです。
冷害・凍害
カビ性
大半の病気はカビによるもので、低温・多湿で発生することが多いです。市販の殺菌剤の大半はカビ用です。多くの種類に多かれ少なかれ発生し、最悪でも一部の落葉程度で致命的な害がないものと、生長点近くに発生し、特に小苗で致命的になるものとがあります。慣れないうちは小苗を避け、体力のある親株を育てるのが安全です。主な薬はトップジン、ダコニール、ベンレートなどです。
葉の黒点(糸状菌)
デンドロビウムなどで、葉の一部が黄色くなって中心に黒い点ができることがあります。黒点病などと呼ばれますが、カビによる症状で、低温期の長い雨ざらしなどで起きます。次第に葉全体が黄色くなって落葉します。黒点には胞子がたくさん入って、伝染の原因になるそうです。
炭疽病
コチョウランの葉
に黒い点ができ、周りが黄色くなってどんどん広がり、他の葉や隣の株にも移って、落葉することがあります。
細菌性
本当の細菌性の病気は真正の軟腐病だけと言っても良く、カビ性に比べると稀ですが、カビ性のものを細菌性と誤解されていることが多いです。
軟腐病
典型的な症状は、コチョウランの肉厚の葉が黄色っぽく、柔らかくて水っぽくなり、
特有の異臭を放つものですが、稀です。パフィオにも見られるようです。他にも似た症状で軟腐病と呼ばれることがありますが、カビが原因の別の病気や、日焼けや冷害による物が殆どで、異臭がありません。
初期は小さな褐色の斑点で、これまた他の病気と区別がつきにくいです。細菌には抗生物質しかきかず、大半の殺菌剤は無効か有害です。
カトレヤの葉に出たもの、急速に広がり、水浸状になり独特の臭気を発し褐色の水滴が滲み出すこともある(
石の華から許可を得て転載、写真も)
ウィルス性
モザイク病(シンビジウムウィルス)
シンビジウムの葉が葉脈に沿ってまだら模様になったり、カトレヤの花に斑点ができたりします。カビ性のものと違って、治りません。昔のチューリップの斑入りなどは、バイラス病と呼ばれたウィルス(現在の正式な呼び方)に依ってできたものでした。
家庭で数年育てた蘭は大半がウィルス病にかかっていると言われています。害虫、株分けの際の鋏を通じて、水やりなどにより伝染します。
左:リカステの葉に出たモザイク病、初期の段階 右:シンビジウムの葉に出たモザイク病(
石の華から許可を得て転載、写真も)
2 害虫
カイガラムシだけは、植物と共に入ってきた外来種なので、新しい株を入手しない限り、広がりません。葉ダニやスリップスは、他の植物から来るため、繰り返し再発します。種類によって、効果のある殺虫剤が異なり、また、同じ薬を繰り返し使うと抵抗力が出てきます。さらに同じ虫に対しても、違う機構で効く薬があるので、使い分けをすると良いでしょう。
カイガラムシ類(昆虫)
マルカイガラムシ
シンビジウムでは、家庭で育てて数年経つと、根元付近などに、直径2-3mmの円板が見られることがあります。入手した苗に潜んでいた
マルカイガラムシ類が、次第に繁殖したものです。生まれたばかりの幼虫だけが動くことができ、雨に弱く、薬も効きます。それ以降は貝殻を被るので、薬が効きません。最後は羽化して成虫になります。
左:カトレアの葉の付いてる「ヤシシロマルカイガラムシ」、寄生してる周辺部が黄変してる、表にこれだけ付いて得ると裏側はかなり付いてる
右:左の葉の裏側、白いものは卵のう?(
石の華から許可を得て転載、写真も)
コナカイガラムシ
コチョウランなどでは、ワラジ状で長い尾のある灰色の虫が葉裏に群生して動き回ることがあります。
ナガオコナカイガラムシです。流水を当てて洗い流すことができ、薬もある程度効きます。
左:コチョウランの葉裏で群生するナガオコナカイガラムシ
右:ビニタイに隠れていた卵嚢(右)と、中の卵(左)
ハダニ
葉の裏などがかすれたように白っぽくなります。目に見えない位の小さな虫(0.5mm以下)で、昆虫でなく蜘蛛の仲間です。
スリップス(昆虫)
蜂のような形をした、黒っぽい2mmほどの小さな虫が動き回ります。汁を吸って株を弱らせます。
左:食害の後とスリップス、右:スリップスの成虫、種類は判らない?
殺虫剤
ボルスタール・・・・・スリップスの専門薬で成虫や幼虫に効果がある、残効性はあるが、やや遅効的である。(
石の華から許可を得て転載、写真も)
2011.3.5 早春に室内で咲いたフォーミディブルの花を食害するスリップス、虫の上の薄くなっているところが食害の痕
参考1 ウィルス・真正細菌(バクテリア)・カビ
ウィルス、非細胞性、細胞に寄生、大きさは一般に100nm前後、インフルエンザウィルスなど、生物と非生物の境界にあたります。
細菌(真正細菌、バクテリア)、1〜10μm、核を持たない(原核生物)、大腸菌など、抗生物質が作用
カビ:菌類(キノコ・カビ・酵母)のうち、菌糸と呼ばれる糸状の細胞からなり、胞子によって増殖します。キノコは子実体と呼ばれます。
真核生物には、動物界、植物界、菌界が含まれます。菌類は細菌類と合わせて微生物と扱われることがあります。真核生物です。
非細胞性(非生物)
ウィルス−−−−−薬が効かない−−−バイラス病
細胞性(生物)
原核生物(核を持たない)
真正細菌(ドメイン:バクテリア)−−−−−抗生物質−−−軟腐病
古細菌(ドメイン:アーキア)
真核生物(核がある)
原生生物界(藻類、原生動物)
植物界
菌界/カビ−−−−−一般の殺菌剤−−−殆どの病気
動物界
2013.3.21 日焼けの見出し、若葉の日焼け
2012.12.18 冷害・霜害・凍害
9.12 サボテンのカイガラムシ駆除法
7.6根腐れ株の助け方(のレシピ)
2011.3.31 スリップスの写真追加
12.6 日焼けとカビ病(炭疽病)
12.1 種類ごとの病気の一覧表作成
11.28 無農薬栽培の項に「減農薬栽培」追加、全体を段階制に
11.27 主な病害虫と対策作成
9.5 病気と農薬の記述追加、害虫の駆除と予防、無農薬栽培
7.25 参考1カビ、細菌、ウィルス、参考2殺菌剤・殺虫剤
2010.7.19掲載開始