洋ランのレシピ
洋ランの遮光

色々な方法
ネット、木漏れ日、木陰、物陰、日陰と、曇りや雨天

目次
1 初めに

1 初めに

洋ランの栽培と言うとすぐに遮光率○%という言葉が出てきます。しかしこれは専門家の言葉・やり方ではないでしょうか。他の園芸ではこんな言葉はでてきません。改めてまず目的から考えて、家庭で現実的にできるやりかたで良いと思います。
遮光の最大の目的は、日焼けを予防することです。病害の項でも述べているように、「日焼けは万病のもと」です。ただし、そうかと言って、光が弱過ぎては、光合成が不十分で洋ランは育たず花が咲きません。遮光率が細かく、種類や季節や人によって異なる数字になっているのは、日焼けを防ぎ、生長を最大にする最適なポイントを示そうとしているからでしょう。しかし、家庭では最大の生長をさせる必要はないので、日焼け防止を優先して安全な余裕を見て、また色々な種類を一緒に育てるなら大雑把に、すれば良いのです。また、生長していないときは光を余り必要としませんが、生長期には日射不足にならないようにと言う注意が必要になります。

2 日焼けのしやすさ

洋ランの大半は、樹木に着生し、木漏れ日の中か木陰で育ちます。また、そのため、湿度が高く、風通しの良い所でそだっています。そのせいもあってか、ほとんどの洋ランは、日向で直射日光に当て続けると多かれ少なかれ日焼けしてしまいます。ただし日焼けとは、実際には葉の温度が50-60℃以上になることによる熱焼けです。
日焼けへの抵抗力や、育っている処の日射の強さは、洋ランの種類により異なるので、強光種、中光種、弱光種などと分けられます。強光種とされ、ランの初めに栽培されるシンビジウム、デンドロビウムでは、遮光無しでも何とかなりますが、中光種や弱光種を育てるには何らかの遮光が必要になります。特に日焼けしやすい、コチョウランなどは、ほぼ1年中日除けをしないと育てられません。また、日焼けは葉の温度により決まるので、同じ種類でも葉内の水が少なくなっている乾き気味の時や、休眠期や、根が弱って水を吸えなくなっている苗などほど日焼けしやすくなります。

3 季節などによる日焼けのしやすさ

日射の強さと高さや、日射と同様に日焼けにかかわる気温の高さは季節と共に、また、家の周りの場所などによって異なります。従って、種類と苗の状態と季節と環境に応じて、置き場所や人工的な遮光の程度を、変える必要があります。

冬−屋内

まず、日焼けの心配を余りしなくて良いのは、屋内に取り込んでいる期間です。

早春−屋外に出す

春になって屋外に出そうとすると日焼け予防が必要になります。最初は、苗が日光に慣れていないと考えて、完全防護を優先します。日向でも、木漏れ日でも、直射日光を完全に防ぐことから始めます。弱光種は、手が回らなければ家の北側の日陰でも、室内よりは明るいです。苗の含水量が少ないため日焼けしやすく、新葉は抵抗力が小さいと思われるため、油断は禁物です。また、落葉樹は、葉が出ていないため、まだ木漏れ日として利用できません。強光種は、ほぼ直射日光を当てても大丈夫です。

春−生長開始

苗が水を吸って日焼けへの抵抗力が増し、落葉樹の葉が出て適当に影を作り始めます。一方で、生長のためにはなるべく強い日光を当てる必要があります。そこで、木漏れ日で程良く日光に当てるのが基本と言えるでしょう。

2 色々な遮光法

(1)遮光ネット

一般には、遮光率○%とか、網状のものを被せるように言われています。室内ではカーテン越しの光を当てると言われます。
シンビ、デンドロ以外を育て始めたばかりの場合には、遮光ネットを使うのが無難でしょう。
ただし、季節や種類によって、割合の異なるものが指示されていますが、実行不能ではないでしょうか。
色々な種類が混在している時に、異なる遮光率が指示されている場合は、健康な株なら、中間で良いと思います。
遮光シートの役割は、単に光量と熱量を下げるだけでなく、太陽から一方向に来る直射光だけでなく、森林の中のような散乱光に変える役割が大きいと言われています。
世話に慣れてきても、下に書いたような方法がなく日焼けの心配のある場合は、遮光ネットシートを使うようにします。
また、西日は、特に夏は、日焼けの原因になりやすいので、遮光ネットの利用法として西日だけを強く遮る方法が考えられます。
さらに、晴れた日には遮光の必要があるが、生長を良くするために日向に置きたいと言う時に、世話ができるなら、晴れて高温になる日だけ一時的にネットを被せることもできます。
以下には、シンビジウムやデンドロビウムは含まれていません。

温室の天井の遮光網

棚の周りを遮光網で覆った例


西日対策に、遮光率の大きいネットを追加した例

カーテン越しのミディコチョウラン


(2)木漏れ日

遮光シートが人工的な世話の代表とすれば、木漏れ日は、野生のありのままの姿です。世話に慣れてきたら、遮光シートよりも望ましいと言えるでしょう。
自生地では多くの洋ランは樹上に着生して木陰で遮光されています。また、地面に植わって周りの草木に隠れている場合もあります。
家庭での栽培でも、庭の木や背の高い草の陰に置いてやれば、それに近い遮光ができます。


庭の木陰のカトレヤ

テラスのシンビジウムの陰のミニカトレヤ

(3)直射日光
健康で十分水やりをしたランは、そうでないよりもずっと日焼けになりにくいです。従って、多くの種類で、1年の大半を直射日光で育てられている場合があります。遮光も、一般に言われているほど割合を大きくしなくても、日焼けになることはありません。
直射日光の場合は、鉢の下に気をつける必要があります。テラスなど、コンクリートの上にじか置きすると、冬は冷え、夏は暑くなるので、間に物を挟みます。それでも、夏の南向きのテラスは、シンビジウムでも日焼けします。
 
秋のテラス

(4)軒下、物陰

一方、軒下とか、家の北側の壁沿いや、塀の陰などは、日が当たりません。ただし南側では冬に、北側では夏に、朝とか夕方だけ日が当たる場所があります。一般に真昼を除いた数時間日に当たると良いとされている種類はこのような場所に置くことができます。弱光種なら、直射日光の全く当たらない物陰でも育ちます。

(5)曇りや雨

曇りや雨の日には日に当たらないようですが、照度でいうと、むしろ日陰や物陰よりは晴れの日に近いです。従って、このような日には、できれば直射日光の当たらない場所に置いてある種類は空の下に出して雲を通した日光に当てることが望ましいです。

(5)棚

鉢が増えてくると、場所を取らない棚を使うことが増えます。最上段は直射日光を浴びますが、下になるに従って、光が当たらなくなります。3段目以下は光量が極端に減り、物陰より暗くなるので注意しましょう。
横からは直射日光が当たるので、朝日や西日に対して遮光をする必要があります。


年間の置き場所、季節と種類による遮光の程度

季節と共に、日の強さ・高さや温度が変化するので、遮光の程度を変えてやらなくてはなりません。最高気温を目安にすると良いと思います。
春、屋外に出したばかりは、苗の水分が少ないので、いきなり日向に出すと、日焼けの恐れがあります。落葉樹も葉がなく、日は高くて、適当に日を遮ってくれるものがあまりありません。軒下、ベランダの壁の陰、縁の下、庭の北側などがありますが、日光不測気味になりやすいです。特に日焼けしやすいコチョウランとパフィオは棚の最上段以外に置くのが一つの方法です。
夏日(最高気温25℃以上)では、強光種以外は直射光(日向)では日焼けする恐れがあります。特に春はまだ苗が水を十分に吸っていないので注意します。
真夏日は、特に梅雨入りころからは、ぐんぐん生長する時期なので、日焼けに注意はしますが、日光不足にもならないように注意が必要です。
猛暑日は梅雨明けから8月一杯が中心です。多くの種類が、仮休眠に近い状態になるので、思い切って木陰に入れてしまうのが安全です。日光は不足気味ですが休ませると考えます。シンビジウムやデンドロビウムなどの強光種は、真昼と午後早くの西日は少なくとも直射日光が当たらないようにする必要があります。
再び真夏日になります。強光種は西の塀の内側位で大丈夫です。
再び夏日、秋の高温は貴重です。同じ温度でも、秋は苗が水分を多く含み、日が低くなって、木陰が作りやすいため、日向に近くても大丈夫です。一番丈夫なシンビジウムを日向の最も南に置き、ミニ洋ランなどは例えばシンビジウムの葉陰で育てることができます。夏日の終り頃は、確実にできるなら、日向に置き、夏日のみ遮光ネットを掛けるようにすると太陽の恵みを十分利用することができます。
夏日が終わると、大部分の種類は直射日光でも日焼けしなくなります。



2011.3.29 日焼けのしやすさ
10.8 年間の置き場所
7.28置き場所から分離、遮光の色々