植え替え講習会について
植え替え講習会のあらまし

連休前後になると、大きな園芸店では、洋ランの植え替えの講習会が開かれます。
それを覗いて見ました。
洋ランの生産園か、資材の製造元の人が来て、「お客さんが持ってきた苗の、植え替えを実演しながら、種類ごとに水やりや日除けなどの世話のポイントを話す」というのが普通のようです。
苗を持ってこなかった人も含めて、大勢の人が熱心に聞いています。
植え替えはタダですが、鉢や、配合の培養土や、鉢底のガラや、肥料や、栄養剤を使う経費がかかります。
講習会をやる方は、その売り上げが本当の目的ではないかと思われます。「高齢者をターゲットにした資材の実演販売」の匂いがします。
苗を持ってくるのは、これまで何とか枯らさずに育ててきた、ある程度経験があるか、上手な部類の人のようです。
ただし、植え替えは難しいと聞いているのでプロにやってもらった方が安心ということでしょうか。
本やテレビでは分からない、実際のやり方や勘所などを知ることができるのはプラスになるでしょう。
また、植え替えをしてもらった人は、大事な苗を枯らさないで済むならば、役立ったことになります。
本当に講習が必要なのは、ランが初めての人や、植え替える前に枯れてしまう人ではないでしょうか。

植え替えに関して大事なこと

それはともかくとして、植え替え講習をやるとしたら、どんなことが大事でしょうか。

植え替えに関して、一番大事なのは、やり方ではなくて、なるべくしないことです

講習会というと、植え替えがテーマになっているので、植え替えは大事な作業だとか、植え替えをしなくてはいけないかと考えがちです。
しかし、「植え替えた年は咲かない」と言われるように、短期的には花が咲きにくくなり、苗が弱るのです。
従って、「植え替えは必要のない限りしない」のが正解です。
植え替えの必要は?
以下の場合は植え替えの必要があります
生長が盛んで、苗が鉢いっぱいになり、生長する余地がない
 新芽の出る場所が残っている内は、植え替えしなくても大丈夫です
 植え込み材料を全部落とす植え替えでなく、一回り広い鉢に替える、鉢増しなら、植え傷みが少なくなります
植え込み材料が古くなって、根腐れの恐れがある
 鉢の表面を見ただけでは分かりません。水やりが多めの育て方では、ミズゴケ植え、バーク植え共に、1年以上たつと、古くなってきます。
 ミズゴケでは、最初白かったのが茶色っぽくなり繊維が見えない塊になってきたら危険です
 バークでは、最初は明るい茶色だったのが、何時でも湿りがちで黒っぽく、丸く膨らんだり、カビが生えたら危険です
 鹿沼土植えでは、材料が悪くなりにくいので、植え替えの間隔が長くできます
根腐れしている
 これも、透明ポット植えでないと、外から見ても分かりませんが、根が元気な白っぽい色でなく、茶色や黒っぽくなっていたら根腐れです。
植え替えのやり方で一番大事なのは、根を傷めないために根に付いた植え込み材料を残すこと
植え替えで一番問題なのは、根から植え込み材料を全部取り除いて、植え替え後に水を吸いにくくなり、衰弱することです。
植え込み材料が古くなった場合は、古い材料をなるべく除く必要がありますが、それでも、根の周りだけは残して置く方が安全です。
鉢が一杯になった場合で、植え込み材料には問題が無ければ、同じく、根に付いた植え込み材料は残して置くのが良いのです。
根腐れしている場合は、根腐れした根については除いて構いませんが、元気な根があるなら、なるべく植え込み材料が落ちないようにします。
植え替えよりは鉢増し
入手して間がない苗は、特に小さな鉢に植えられているので、鉢を大きくする方が良いのです。そうすると、根に付いている植え込み材料を落とす必要もありません。
家に馴染んで、元気な苗で、花が咲く体力のp十分にある大きな株なら、植え込み材料を落として、元と同じ大きさの鉢に植え直しても大丈夫です。
植え込み材料は配合土より単品の方が楽
植え込み材料は、現在ではバークやミズゴケが主流で、一部に以前に使われていた軽石を含む配合土が使われています。生産者や趣味家はバークやミズゴケの単品で育てているのが大半ですから、配合土を使う必要はないと言って良いでしょう。単品の方が毎回同じものが手に入りやすいです。
根はなるべく切らない
特にシンビジウムなどでは、「余分な根は切って植え替える」ように言われますが、そうすると、苗が弱って、咲きにくくなることに注意しなくてはなりません。また、刃物などを使うと、ウイルスが伝染する危険もあります。入手して間がなくて、鉢が小さい場合は、鉢増しが適当で、その場合には根を切る必要も少ないので好都合です。
根の隙間に植え込み材料をきちんと詰める
元気で根が多い株、植え替え間隔が長くて根が互いにくっついている株、などを植え替えするときに、植え込み材料を鉢にいっぺんに沢山入れると、鉢の中心部や下の方の根の間に植え込み材料が入りません。そうすると、水やりしてもそのような根には水が生き届かず、根が枯れてしまいます。
そこで、根が多かったり、束になってしまったりしている株は、根をなるべくほぐして、根と根の間に植え込み材料が入りやすくすると共に、植える時に根を良く広げ、底の方から少しずつ根と根の間に植え込み材料を入れながら、順に上へと進むようにする必要があります。
表面の根をきちんと覆う
植え替えする前の苗は元気が良いと、表面に新しい根が露出しています。植え替えの時には、それらを植え込み材料で覆ってやる必要があります。そうでないと、乾きやすく、次に花の咲く新芽の最も元気な根を枯らしてしまうことになり、華が咲きにくくなります。
根に植え込み材料を残した場合は植え替え後すぐに水をやる

2011.4.29