ミディコチョウラン
ドリテノプシス
Doritaenopsis
今月の洋ラン


満天紅
Doritaenopsis Queen Beer 'Mantenkou' 1992
1.初めに
コチョウランとして店頭に並び贈答に使われる、大型で白の大輪がアーチ状に並ぶ種類は、初心者の栽培には向きません。シンビジウムやデンドロビウムに比べると、難しく初めは手掛けない方が安全です。一般に、丈夫な種類に比べると、根腐れしやすく、寒さに弱く、日焼けしやすく、病気になりやすいからです。
しかし、ファレノプシスと強健な近縁属のドリチスの属間交配種であるドリティノプシスの小型種は、丈夫で、日焼けしにくいなど、コチョウランの入門にはうってつけです。原種の花茎が直立するので、アーチ状の仕立てはあまりされません。

2.ミニコチョウラン(ドリティノプシス)図鑑
ドリティノプシスはファレノプシスと、1属1種のドリティスの属間交配種です。ファレノプシスの割合が高い物が多いようです。
(1)ドリティス・プルケリマ Doritis pulcherrima
図説:スマトラからミャンマーにかけて産し、着生から地生まで広く適応、タイでは海岸近くの砂礫地や小さな木に着く。低温に強い。日光にも強い。
、花色が紅桃色で美しく、多輪性。
gal

プリチェリマ'バンコック'
Doritis pulcherrima 'Bangkok'
入門:ドリティノプシス作出の元になったタイ・ミャンマー産の原種、濃緋色、品種改良に使われる有名種、ファレノプシスよりもはるかに強健、夏咲き

(2)ファレノプシスの原種交配親
エクエストリス
Phalaenopsis equestris
入門:ファレノの中では比較的低温栽培ができる、不定期咲き。
gal

エクエストリス・アルバ
入門:草丈15cmの小型種、花茎から高芽を良く出し、増殖できるので、花後も花茎を切らないでおくと良い
   gal


アマビリス
amabilis
入門温室向き、ファレノの中では比較的低温栽培ができる。
原色写真集:中輪、唇弁の黄色が鮮やかで、他の白花とは一味違う、花並びは今一つだが、花持ちは比較的良い、生長は早い。gal


交配種
色々な種類がありますが、代表的と言えるものは少ないようです。原色写真集に載っている下記の種類はネットで検索してもほとんど見当たりません。それほど普及していないためと思われます。

ニュートヨハシ'ファーストレディー'
Dtps. Odoriko X P. equestris, 1986
Dtps. Odoriko = Dtps. Jason Beard x Phal. Eva Lou, 1980, Dogashima
Dtps. Jason Beard = Dtps. Pueblo Jewel x Phal. Mad Hatter, 1972, C. Beard
Dtps. Pueblo Jewel = Phal. Dos Pueblos x Dtps. Pink Jewel, 1968, C. Beard
Dtps. Pink Jewel = Dor. pulcherrima x Phal. Pink Princess, 1964, Markell




ホワイトファイアー
Dtps. Red Coral X Alight, 1984, Clulow
Dtps. Red Coral = Dor. pulcherrima x Phal. Doris, 1959, Clarelen

原色:中輪、親はプルチェリマのアルバとの交配のため、花茎は直立、花弁は熱く花もちが良い、直立仕立ての白花品種として面白い。

満天紅
Dtps.Queen Beer’Mantenhon’
(Dor. pulcherrima × Phal.Meteor) 1992年, Wu Shin Ming
原色:中輪、花径は4-5cmで大きくはないが、花色が鮮紅紫色で目立つ品種、花茎は4-50cm前後に伸び、小枝を1-2本着け、輪数多い。

ねばーらんど、ミディ ミニ系写真より http://www.nev-web.jp/mini.htm


タリサクレーム
交配親:不明
原色:小輪、花色濃赤、花茎直立、多輪・約15輪、輪間がやや空き、ボリューム感に欠ける、強健で低温にも強い。


Dtps. U/R (Beauty Sheena x Sakura Jewel)。  台湾の実生
http://paphio-in-okinawa.at.webry.info/200804/article_19.html


図解:ドリティノプシスは花色が紅桃色で美しく、多輪性で、花もちも良い。
栽培法はファレノプシスに準ずるが、光線はそれより強い方を好み、直射光でも何とか耐える位なので、カトレヤ並が良いと思われる。

ニイハオ
Dtps. Wedding Art X P? Chieko Serenity、未登録
Dtps. Wedding Art = Dtps. Wedding Candy x Phal. Cosmetic Art, 1989, Dogashima
Dtps. Wedding Candy = Phal. Pamela Wolf x Dtps. Odoriko, 1989, Dogashima
原色:大型・大輪、花色濃く、艶のある花弁、生育はゆっくりで1年に葉の展開は2枚程度だが、花は毎年咲く。

サワディカ
Yuuzuru X Dtps. Wedding Art、未登録
原色:大型・大輪、花弁の中央にピンクのぼかし、寄せ植えにすると豪華で人気がある、大株になると枝咲きになる。

参考:入門:巨大輪
モダン ビューティー
トン ツィー ピーカン
ミシマ ラック 'ブルーメン インセル'
原色:
カーニバル
シティーガール
Dtps. City Girl = Dtps. Odoriko x Dtps. Jason Beard, 1983, Kuwata
ハッピーモア
Dtps. Happy 'More'
ハッピーバレンタイン
Dtps. Happy Valentine = Phal. Otohime x Dtps. Odoriko (1983)
              ┌ Phal. Otohime
Dtps. Happy Valentine ┤ 1973
           1983 │
              └ Dtps. Odoriko
                1980

abi


Dtps. Odoriko = Dtps. Jason Beard x Phal. Eva Lou (1980)
7代交配

           1956
          ┌ Dor. pulcherrima
Dtps. Pink Jewel ┤
          └ Phal. Pink Princess
            1959


ゴールデンシャワー
属間交配種 Dolitaenopsis


                                   
日本で胡蝶蘭生産が本格的にはじまったのは30数年前のこと
胡蝶蘭の育種は、より濃く鮮やかな色彩、花びらが大きく、丸く、より背が高く
花持、花並びなど洗練された豪華な花に改良され、
日本の胡蝶蘭の育種は世界のトップレベルになりましたが
しかし、その反面、可愛らしさや優しさなどの花の本質は軽視されておりました。

そこで、花の原点に戻ってやさしい色彩で人の心を癒してくれる花、
日本の花である桜をイメージした胡蝶蘭を開発するため、
フィリピンの標高300〜600mに自生してる原種のルデマニアナと
白の大輪系品種のシラネに、を交配し、多くの実生株の中から
もっとも桜をイメージさせる優良個体を選抜し”ハルガスミ”と名づけました。

”ハルガスミ”は白を基調とした花弁に淡いピンクが入り、花形はやや丸みのある星型で
花の弁質が厚く、頑健な原種であるルデマニアナを父親に持つため、その血をひいて花持ちも良く淡く優しい色彩、ステムの長さと穂の長さのバランスが良く、まとまりのあるかわいらしい雰囲気です。

ハッピーバレンタイン”ラズベリー”について

■花の特徴■
花色は赤紫地にややストライプが入り、ペタルの付け根に近づくにしたがって白くグラデーションが入ります。濃い紫紅色のリップとのコントラストが非常に美しく全体的な色彩はドリティスの血を引いてコントラストがはっきりして鮮明です。花径は約10〜11cmで丸みのある整型花です。

ラズベリーの最大の特徴は、嫌味のない美しい色彩と並びの良さ、ステムの長さと穂の長さのバランスが良く、気品のある美しい姿です。また、花持ちが良いことがなにより自慢です。

■開発の経緯■
ハッピーバレンタインは、1978年2月に淡いピンクで大輪のファレノプシスである「オトヒメ」を母親に、白弁赤リップのドリティノプシス「オドリコ」を父親に交配して作出されました。さらに、その中の優良個体"M-50"と"M-14"を交配(シブリング)した中から選抜した優良個体を”ラズベリー”と命名して1994年よりメリクロン苗の増殖を開始し、試作を繰り返して特性を確認してまいりました。

当時の日本に出回っている胡蝶蘭のピンクといえば、リップが白いものやボヤケた色のものが主流でした。ハッピーバレンタインは淡いピンク「オトヒメ」にリップの真っ赤な白赤「オドリコ」を交配することにより、淡いピンクでリップも赤という非常に美しい色彩を生み出すことに成功した日本でおそらく始めての品種です。このハッピーバレンタインの成功によりピンクのリップは赤という認識が業界の主流となっていきました。

■受賞暦■
1998年2月には関東東海花の展覧会においてハッピーバレンタイン”ラズベリー”農林水産大臣賞を受賞しました。2002年には本格生産を前に農林水産省に品種登録を申請しました。(掲載承諾を得まして、開発されました生産農家様の説明文より抜粋させて頂きました)

Lime Candy
少しグリーンを帯びた黄色い花弁が、レモンライムのような爽やかさを感じさてくれます。花もちの良さも魅力です。黄色の胡蝶蘭は「金運・開運」の色として新築・開店のお祝い、長寿のお祝いとして人気がございます。
お贈りされた方にもたいへんお慶び頂ける逸品です。





3.コチョウランの育て方
「易しい種類」である、シンビジウムやデンドロビウムに比べると、直射日光では日焼けする、冬は最低10℃以上でないとその後の花が期待できない、やや根腐れしやすく・病気にかかりやすいなど、育てにくくなっています。
根腐れを避けるには、慣れないうちはミズゴケよりもバーク植えの方が良いかもしれません。
柔らかい透明ポリポットに植えて、鉢底近くに横穴を開けると、
植え込み材料の湿りや根の健康状態が見え、鉢底の過湿が防げます。
年中出窓にカーテンをして室内で育てることができる。

以下は上記の「素人園芸より」
きわめて寒さに弱く、加温設備なしでは、少々やりにくい。また、直射日光が大の苦手なので、戸外の日向に置くなど、もってのほかである。
葉が4枚以上ある状態で、一日18時間で30〜40日間、18〜20℃の温度に当たり続けると、花芽ができる性質があるらしい。開花調節がしやすいので、一年中開花株が出回っている。
花後、花茎を2〜3節残して切ると、再度花芽が出て二番花が咲くことはよく知られているが、体力のない株だと弱ってしまうので、あまりおすすめしない。
アマビリスの原産地は1年中昼は30℃近く、夜は20℃前後、湿度は70-80%となっています。(下記資料)

4.コチョウランの根
元気なときは、根の先が緑で伸び続けます。
1月10日開花中            10月30日、出窓で空中に
  


7.参考資料

カ:保育社カラーブックス「カトレヤ」1983¥には小型のカトレヤの項があり、代表的な交配親である矮性原種が列挙されています。
入門:「主婦の友・決定版・失敗しない洋ラン入門」2002のミニ・洋ラン/ミニ・カトレヤの仲間の項では、下線(追加は青)の原種が挙げられています。
図解:「図解 洋ランの栽培」1981では、これらの原種の属する属ごとの特徴と栽培の注意が詳しく述べられています。
園芸:最新園芸教室 ミニ洋ラン1995&では、多くの種類、主に原種が紹介されています。
原色:「原色洋ラン写真集」1997
育:園芸ライフ 洋ラン育て方 咲かせ方 江尻光一、家の光1990

交配種の系統図は、年号入りのものは主にAbiko Orchid Room交配系統図のページからの転載です。
http://www.orchid.or.jp/orchid/people/hashizume/Genealogy/Phal/Genealogy_Phal.htm

写真は多くのホームページに載せられている物の中から、個体名付きを初めとして資料的価値の大きいと見られる物を転載させていただきました。多くの種類を使わせていただいている所は、種名の最後に下記の略号を付けてあります。連絡のついていない掲載元の方はご容赦ください。個別の種類の転載はなるべく出典ホームページurlを写真の下に引用するようにしました。
abi:Abiko Orchid Room 『ファレノプシスの小部屋』など、http://www.orchid.or.jp/orchid/people/hashizume/kakeizu/present/Lc_Mini_Purple/Room_Minipurple_Frame.htm
gal:我が家で咲いた蘭の写真集、ファレノプシスのギャラリー、http://www.geocities.co.jp/PowderRoom-Lavender/3923/photo3.html
koj:蘭、ファレノプシス、http://kojimatsk.hp.infoseek.co.jp/MyCattleya.htm
ver:ベランダオーキッドナーセリー、http://superflua.blog.ocn.ne.jp/letter/cat809371/index.html

2009.1.29公開