チェンジ
洋ランの水やり−易しく楽しい
水やりを易しく
水やりをコントロール
目次
初めに
水やりを易しく
透明鉢の中を見ながら水やり
高温生長期は定期的に一斉に満水まで水やり
低温期には毎週1回のやや少なめの水やりが基本
低温期は、中の乾いていない鉢に注意
水やりをコントロール
1 初めに
水やりを易しく
植え方で根腐れが防げ、透明ポットで水やりの判断が易しくなります。高温・生長期には根腐れの心配なしにたっぷりとやります。種類や鉢ごとに別々にする必要もありません。低温期には乾くのを確かめてからやや少なくします。
水やりをコントロール
水やりのしかたというと、必ず、鉢の表面が乾くのを確かめてから、と同時に、すぐ、とか、2日待ってとか、となっています。鉢の状態が全てに優先するやりかたで、人はそれにならっているだけです。暑い時期には毎日とか朝夕とかとても忙しくなり、できないことを求められます。何より、一鉢ずついつも点検していなくてはならず煩雑です。
そこで、乾き方をコントロールすれば、水やりも変えることができます。1週間で次の水やりができるようにとか、夏でもせめて2-3日おきにとかに、変えられると楽になります。
以下では、この2点について分けて考えます。
水やりを易しく
2 最初は透明鉢の中を見ながらの水やり
根腐れの原因は、はっきりさせられていないようです。従って、その対策も有効ではありません。そこで、整理してみました。
(1)入手した苗が既に根腐れしている
根腐れと言うと、いかにも、育て方が悪くて根腐れしたように思われますが、典型的なコチョウランを初めとして、店頭にある時に既に根腐れしていることが多いのです。開花した時が最盛期で、すでに衰弱が始まっていることが多いです。
これに対しては、根腐れの無い元気な株を入手するように注意することと、弱った苗が回復できるように、植え方を変えることです。
(2)植え替えによる根腐れ
洋ランが店頭に出回るのは花の多い冬から春の時期ですが、洋ランは休眠期に開花する性質があるので、その時期には根が一番弱っています。しかも、自生地の休眠期は乾季ですが、我が国の休眠期は寒い時期のため、根は一層根腐れしやすくなっています。
従って、鉢が湿ったままで水やりすると、根腐れします。これには(2)と同じ対策で良いのです。
さらに、植え替えを、温度が低めの時に行うと、健康な根を傷めてしまい、暖かくなっても回復しません。これは、慣れないうちは植え替えを見送るか、十分暖かくなってから植え替えをすることで防げます。
元からある根腐れに次いで多いのが植え替えによる枯れです。どうやらその理由は、低温で根が不活発な時期に植え替えをすると、水やりしても根が水を吸うことができず、過湿が続く悪循環となって、根が腐るようです。
これに対しても、暖かくなってから苗を入手すること、慣れないうちは植え替えをなるべく避けることが良いようです。
(3)低温期の水やりによる根腐れ
(4)鉢の表面を見て水やりするために、鉢の中が過湿になるのに気付かず、根を弱らせてしまう。
鉢の表面が乾いていても、中の湿り方は、季節、鉢の大きさ、苗の吸水力の強さ、根の健康状態などにより千差万別です。鉢の中が適度に乾くまで待ってから水やりしていれば、根腐れは置きにくくなります。コチョウランで使われている、透明ポットに切り替え、鉢の中を見ながら水やりするようにするだけで、根腐れは減ります。
3 根腐れの対策−3段階の植え替え
これまでとは異なって、根腐れしにくい植え方に代えてやることにより、普通の種類の根腐れを減らすことができます。その上、根腐れの心配なしに、水やりが簡単で楽しくなります。慣れない人の安全のために3段階に分けてやる方法を紹介します。慣れてきたら、暖かくなってからの時期にいっぺんにやることができます。安全のために
3.1 透明容器への移し替え
初心者でも、低温に入手した場合でもできて、根腐れ防止にまず効果があるのは、鉢を素焼き鉢やプラスチック鉢などの中の見えないものから、中の見える透明容器に代えることです。
その見本としては、コチョウランがあります。大輪コチョウランの大きな鉢の中を見ると、3株がそれぞれ、透明のプラスチックの小さな鉢に植えられていて、それらが大きな鉢に並べられています。透明ポットでは、中のミズゴケなどの湿り具合も、根の張り方や健康度も一目瞭然です。
透明ポットに植えられていない鉢を入手したら、そっくり抜き取って、透明容器に移し替えましょう。
こうすると、水やりの不安が減り、低温期にない入手しても春まで安心して過ごせます。
透明ポットは、ホームセンターなどでは手に入りにくいかもしれません。行きつけの洋ラン園があれば分けてもらえますがそうでない場合は代わりの方法があります。
ペットボトルは、鉢と同じくらいの太さがあり、中が良く見えるので代用に出来ます。大きさも色々あるので、それまで植わっていた鉢と同じ大きさの物を選べます。鉢の深さに切って使います。
もう一つの代用品は行楽用のプラスチックのコップです。
移し替えるときに2つのポイントがあります。
(1)底と底近くの横に水抜き穴を開ける
あります。
(2)底に発泡スチロールの板を敷く
あります。
3.2 根の周りを乾かす芯入れ=衣替え
初心者でも、低温に入手した場合でもできて、根腐れ防止にまず効果があるのは、鉢を素焼き鉢やプラスチック鉢などの中の見えないものから、中の見える透明容器に代えることです。
3.3 根腐れしにくい植え込み材料への植え替え
初心者でも、低温に入手した場合でもできて、根腐れ防止にまず効果があるのは、鉢を素焼き鉢やプラスチック鉢などの中の見えないものから、中の見える透明容器に代えることです。
季節による水やりの変化(間隔・量・時刻)
水やりは、植え込み材料の乾きに応じてやるのが原則です。乾き方は温度・置き場所(日射)・植え込み材料・鉢の大きさ・種類・根の健康さなどにより変わるので、それに応じて変えます。また、水やりの間隔ばかりでなく水やりの量や時刻も変える必要があります。
真夏−猛暑日、梅雨明け(7月半ば)から9月初めころまで
水やりが最もやさしく簡単なのは、真夏です。根腐れの心配が少なく、早めに乾くので、水不足にならないようにだけ注意すれば良いからです。全部の鉢に一斉に頭からたっぷりと水やりをして構いません。むしろ、鉢の中全体がしっかり濡れないようなら水を長く注ぐ必要があります。また、水やりの時間は夕方以降にします。期間は梅雨明け(7月中旬)から、最高気温が30℃の真夏日が終わるころ(9月中旬)までが目安です。
これに対して他の季節には、多かれ少なかれ根腐れの心配をしなければならなくなります。
真夏日−梅雨入り(6月中旬)から梅雨明けまで、9月初め頃から秋分(9月下旬)ころまで/9月
真夏の前後の期間は、置き場所や、植え込み材料、鉢の大きさなどにより、乾き方が異なることを考慮します。従って、場所ごと、植え込み材料、鉢の大きさごとにまとめるようにして、それぞれ、乾きを確かめて水やり間隔を変えます。水やりの時間は夕方以降にします。夏以前はそれまでが乾き気味だったので確実に濡らすよう、反対に秋は鉢底から流れる位にします。
夏日−春の連休(5月初め)から梅雨入り(6月半ば)まで、秋分から10月末まで/10月
全体に乾きが遅く、元気のない鉢ほど遅くなります。また、ミズゴケはバークよりも乾きが遅くなるので、間隔を開けます。欲を言えば1鉢ごとに乾きを確かめてやる、特に元気がなくて乾きの遅い鉢は別扱いにします。真夏とは考えを切り替えて、乾いていない鉢には水をやらないようにします。水やりの時間は御前にします。
春と晩秋
最高気温が25℃に達しないと極端に乾きが遅い気がします。水やり間隔は概ね週1回に減ります。これ以上間隔が開くと、バークもミズゴケも水を弾いて滲みこまなくなるので間隔を延ばさず、水やり量で調節します。水やりの時間は午前の暖かくなってからにします。
冬−屋内
冬の屋内では、温度だけでなく日当たりで乾きが異なってきます。冬至の前後は光が弱いので乾きが遅いです。2月ことになると、最低気温は最も低いですが、夜の暖房をした室内はそれまでと余り変わりません。日光が強くなって乾きが良くなるようです。3月になると天気の良い日に、できれば日当たりのよい処に出して午前の暖かくなってからやり、夕方まで日に当ててなるべく乾かすようにします。
水やりをコントロール
1 季節による水やり間隔の変化の対策
季節による変化が一番大きいのは夏です。それまで週に2回だったのが、毎日とか朝夕とかに増えます。水やり間隔が余りに狭くなるのは、手間が増えるだけでなく、苗の負担にもなっていることを考えなければなりません。種類によっては、真夏に生長スrわけでもないのに毎日水やりするのは、苗を疲れさせることにもなっています。日射を加減して温度を下げると共に、湿度も上げてやれば、苗の負担は減り、水やり間隔も伸ばせます。人工的な遮光では、湿度を上げることはできません。木陰、草陰にすると、湿度が上がり、ランは安らぎを感じるはずです。勿論雨ざらしなので、水やりの代わりもできます。
2 鉢・植え込み材料による水やり間隔のばらつきの対策
小さい鉢では乾きやすく、ミズゴケよりもバーク植えでは水が不足になりがち、というように、水やり間隔が不ぞろいになります。極端に小さくて乾きが早いのは、やはり、苗に負担になっているので、少し大きめにしてやると、間隔も長くできます。ミズゴケ植えは、前の項に述べた芯入り植えにすると乾きが早くなり、鉢底近くの横穴でも乾きを早くできます。
3 種類による水やり間隔のばらつきの対策
水やり間隔が一番短いのは、シンビジウムで、吸水量が大きく、根腐れしにくいので、高温・生長期には毎日、または朝夕水をやるのが良いとされています。しかし、他の洋ランが週に2回か1回程度の時に、毎日とか1日おきに水やりするのは煩雑です。シンビジウムの水やりが毎日必要なのは、バーク植えで水を貯めにくいことと、直射日光に近いためです。従って、植え込み材料を含水量が大きい鹿沼土に変えると、水やり間隔は伸びます。また、真夏には特に真昼の高温時にやや日陰にしてやると、乾きが遅くなります。苗を疲れさせないためにもその方が良いでしょう。
以上のようにすると、真夏は乾きすぎずに、水やり間隔を1日おきとか週に2回程度にでき、冬はすべてほぼ週1回に出来て、世話が簡単になります。また、乾きが近付くことで、管理が近付き、手が回らなくて失敗するといことも減らせます。苗にとっても安全になります。
バーク植えの水やり量
水やりの量は一般に、「鉢の底から流れるまで」と言われていますが、それでは答えになっていないことは明らかです。乾いてしまったミズゴケ植えやバーク植えに、底から流れるまで水をやっても、隙間を流れて、全体を濡らすことにはなりません。一方、バークは、完全に粒の中まで濡れると真黒になり長く湿ったままですが、それほどでない場合は少し黒ずむ程度ですぐに乾き、濡れ方によって含水量もその後の乾き方も全く異なります。
そこで、どの程度の水やりをすれば良いかきちんと考える必要があります。
まず、上限の量については、真黒になってなかなか乾かなくなるほどには、水をやらない方が良いと思われます。こうすると、まず、過湿が続いて根腐れの危険があります。また、バーク自体の腐れが進み、カビが生えたりして、根を傷めたり、植え替えの間隔を早めなければならなくなるからです。下限の量については、水が素通りして、バーク粒が水を含まないようでは不足です。従ってこの間のどのような状態が適当か、それは実行できるかが問題となります。
まず水やり直後は全体が適度に濡れ、隙間に水が溜まっていないことが条件です。また、日が経つにつれて、上から下までがなるべく均一に、速やかに(数日以内)乾いていくことが望ましいです。
植え込み材料の吸水量と乾き方
洋ラン栽培の最も基本となる水やりについては、どの本でも一言で言うと「鉢の表面が乾いたら、鉢底から流れるまで水やりをする」としか説明がありません。これでは全く不十分です。
そもそも、植え込み材料がどれだけ吸水し、どのように乾いていくかは、殆どまともに扱われていません。ミズゴケの場合は、大まかには完全に濡れた状態、湿った状態、乾きかけた状態、乾いた状態に分けることができると思います。そして、乾いた状態になってからでは、少しくらい水やりしても弾いて吸収しなくなってしまいます。一方バークでも、完全に芯まで濡れて真黒になった状態、粒の表面は濡れているが中は乾いた状態、全体が乾いた状態に分けられ、乾いた材料に水やりしても表面だけしか濡れず、全体が乾いた状態からは少しの水やりでは表面も濡れません。鹿沼土も濡れた状態、湿った状態、乾いた状態の3段階に分けることができます。濡れた状態は、表面的か、芯まで完全に濡れているかの違いがあり、湿った状態も、濡れが引いた状態から乾きかけの状態まであります。鹿沼土の良いところは、乾いても、水やりすれば弾くことなく容易に湿り、濡れてくれることです。
9.22 バークの水やり、季節に依る水やりの変化量、植え込み材料の吸水量と乾き方
8.19 水やりをコントロールを追加
2010.6.30掲載開始