洋ランの雨ざらしと雨除け
病気を恐れていつも雨除けしているのは「角を貯めて牛を殺す」です
一部の種類と時期だけ雨除けし、後は雨ざらしにすると、水やり省略・殺虫剤省略・丈夫で生長旺盛・開花と良いことずくめです
目次
1 初めに
2 雨ざらしの得失
2.1 長所
2.2 短所
3雨除けの基本
3.1 種類
3.2 季節
1 初めに
洋ランにとって雨は大敵のように言われることが多いですが、水やりを補い、害虫を抑えるなど、良い面もたくさんあります。一方で、確かに、低温期の長雨に当てると種類によっては病気になることがあります。雨のたびに一々移動するのは大変ですが、雨の当たらないところは往々にして日当たりが悪かったり、風通しが悪かったりします。雨除けは、どういう場合に必ず必要か、少なくするにはどうしたら良いか考えます。種類と季節が分けるポイントです。
2 雨ざらしの得失
2.1 長所
水やりが省ける
洋ラン栽培で一番手間がかかるのが水やりで、人にもよりますが夏は朝夕2回という極端な勧めがあり、春や秋でも2-3日ごとに必要とされています。雨が降れば、少なくともその時は水やりの必要が無くなり、手間が省けます。
夏負けの防止・生長促進
真夏は、どうしても水が不足し、夏負けしやすくなります。夕立に当てると、生き生きと回復し、ぐんぐん生長します。
春夏新芽・開花の促進
雨ざらしにすると、新芽の出が良くなります。特に植え替えなどして根が気持ち良くなるとなおさらです。冬だけでなく春や夏にも芽が出るので、花の咲き損ないが減り、花を楽しめます。
害虫の抑制
カイガラムシの幼虫やハダニは、雨が苦手です。乾燥した冬の室内ではこれらが繁殖します。春に屋外に出して、時々雨に当たるようにしていると、これらの繁殖が抑えられます。
バークやミズゴケの水弾きからの回復(鹿沼土は問題なし)
乾き気味の育て方をしていると、バークやミズゴケは乾いて水を弾くようになります。そうなると、どんなに水をやっても水を弾いてしまうので水が滲みこみません。その結果、水やりをしている積りでも水不足となって内部から根が枯れていってしまいます。小さな鉢ほど苗が傷みます。
鉢ごと水に漬けたり、何回も大量に水やりしたりしないと、回復せずやっかいです。
雨ざらしにすると、長時間に徐々に仲間で湿っていき、回復して、それからは水やりが楽になり、水が鉢内に行き届きます。
なお、鹿沼土にはこのようなことはなく、乾き方が緩やかで乾きすぎることがなく、一度水やりするだけで鉢の中が全部適度に湿るので、家庭園芸には最適です。
2.1 短所
低温期の根腐れ
低温期に長雨に当てると、種類によっては根腐れします。植え込み材料の過湿が続くのが原因と思われます。
低温期のカビ起因の病気
例えばコチョウランでは炭疽病に罹ることがあります。
また例えばジゴペタラムは新芽が筒状になるため水が溜まりやすく枯れると言われています。パフィオも同様で、カトレヤの新芽が小さいうちに黒くなって枯れることもあります。
3 雨ざらしの方法−雨除けの必要な種類と時期
雨ざらしのやり方、雨除けとの組み合わせで、雨ざらしの長所を生かし、短所を避けることができます。一部の株や一部の時期だけ雨除けにすれば良いのです。
屋外に出した最初は雨除けを
雨ざらしで新芽が枯れると言っても、一部の種類の主に春先だけの現象のようです。従って、屋外に出した直後のまだ寒い期間だけは雨ざらしにならない軒下などに置き、暖かくなった5月(後半)から雨ざらしにすると、被害を防げるでしょう。
コチョウランダケは夏以外は雨ざらしにしない
他の種類は雨ざらしにしても、春咲きに新芽の一部が枯れる位で、大半の種類は害がなく、また株全体が枯れるようなことはありません。
しかし、コチョウラン、特に大型の交配種は、炭疽病の保菌者なので、低温期に長雨に当てると、炭疽病が発症し、株が丸ごと枯れてしまうことがあります。従って、コチョウランだけは、少なくとも慣れないうちは、夏以外は確実に天の防げる場所に置きます。
4 雨除けの基本
3.1 種類
丈夫な種類
夫なシンビジウムは雨除けの必要はありません。デンドロビウムは寒い時期には黒点病にかかることがあります。その他の種類も例えば夏には全て雨ざらしで問題ないようです。
病気になりやすい種類
一方、コチョウランは病気にかかりやすいので、夏以外は原則として雨除けした方が安全なようです。パフィオペディルムもカビの病気にかかりやすいので、真夏以外は棚板を置いた棚の中段以下に置くと遮光を兼ねて安心です。
新芽が枯れたり腐ったりしやすい種類
また、新芽が腐りやすいカトレヤやオンシジウム、新葉が巻いていて水が溜まり枯れの原因になりやすいとされているジゴペタラムなどは、新芽の出始めの時期には雨にも注意が必要でしょう。
3.2 季節
春先
新芽が枯れるのは、冬の室内ででた冬新芽が、室内で枯れる処から始まりますが、それはともかくとして、屋外に出すと、引き続いて芽枯れや、生長点の新葉が枯れることがあります。
従って、屋外に出した当初だけ雨除けすれば、被害は大抵避けられるはずです。
このHPのやりかたでは、コチョウランとグラマトフィラム以外は、全て4月初めには外に出しますが、その際に、芽枯れの起きやすい、ジゴペタラム、パフィオペディルム、カトレヤは雨除けできる場所に置くと安心です。
勿論、多少の芽枯れがあっても、全体として生長・開花が促進される方が良いと考えれば、雨除けはしません。
真夏
年間を通して大まかに考えると、まず、夏の、梅雨明けから秋雨前線の停滞する前の、真夏日や猛暑日の間(6月半ばから9月半ばの3カ月間)は、全ての種類を雨ざらしにして問題ありません。
梅雨と秋雨前線
一方、梅雨時(6月半ばから7月半ば)と秋雨前線(9月半ばから10月半ば)の期間は、雨が数日続いたり、それに伴って低温が続いたりするためか、病気が出やすかったり、根腐れの危険があります。高温の梅雨時によくある、1日の雨で気温が下がらないような場合は、雨ざらしでも構いません。雨が数日続いたり、前後に比べて大幅に温度が下がる場合には、日射に依る消毒も望めないので、弱い種類を優先的に雨除けしましょう。秋雨前線以降は気温が下がり保温に努める方がよいので、日射に強い種類は南向きの軒下におけば安心です。
2011.5.24 表題を「雨除け」から「雨ざらしと雨除け」に変更、雨ざらしの長所に、春夏新芽・開花の促進、バークとミズゴケの水弾きの回復、雨ざらしの方法、前除け季節に春先追加
2010.9.23掲載開始