チェンジ
植え込み材料
ミズゴケよりバーク
シンビジウムは鹿沼土
バンダはミズゴケ巻き寿司植え



目次
初めに

1 初めに

市販されている洋ラン鉢の植え込み材料は、バークが多いですが、コチョウランやカトレヤなどミズゴケ植えもよくあります。植え込み材料が異なると、鉢に乾き方や育ち方が異なり、世話を変えなくてはならず、どちらかがうまく育たなかったりします。そこで、できればどちらかに統一した方が、世話が楽で、コツをつかむのも早くなります。
以下に述べるように、ここでは、殆どの種類の殆どの大きさの苗を、バーク1種類、粒の大きさも中粒だけ(5-15mm)で植えられることを示します。なお例外として、シンビジウムはバーク植えでも構いませんが、保水量が足りないので鹿沼土植えにした方がさらによく、バンダは通気性を良くするためミズゴケ植えにします。

2 色々な植え込み材料の得失とバークの選択


ミズゴケが使われる理由は、以前から主流だったことのほかに、うまく育てられればバークよりもよく育つためであることが多いようです。一方、バークは、以前によく使われていた軽石などに比べて軽いことが普及のきっかけのようで、どの種類を育てても失敗が少なく平均的によく育つことが決め手のようです。また、ミズゴケよりも劣化がやや遅いので植え替え間隔を伸ばせたり、植え替えの際に前の材料を取り除いたり新しい材料を入れたりの作業が簡単になります。
ここで、注意しなければならないのは、これらの考えが、温室で生産者が育てる場合について考えられていることだということです。
趣味で洋ランを育てる場合には別の観点が必要です。ミズゴケの最大の問題は、むしろ室内においた場合のカビ臭や、ナメクジのすみかになりやすいことではないでしょうか。バークでは皆無ではないのですが、程度がずっと少なくてすみます。
そこで、ほぼ全ての種類、全ての大きさの苗を、バークの中粒だけで植えることができます。
育てる点についてみると、
バーク   ミズゴケ
保水量 小 大 バークは小さい鉢では生育不良・大きくすれば良い、ミズゴケは大鉢では根腐れしやすい・芯を入れれば良い
撥水性 大 中 どちらも一旦乾くと水を吸わない、バークは雨ざらしで回復、ミズゴケは柔らか植えだとなりにくい
植込材料取除き 簡単 手間  ミズゴケは柔らか植えで簡単になる
植え込み作業 簡単 手間 バーク植えは大粒では隙間が開く・中粒なら良い、ミズゴケは柔らかく包むだけなら簡単
劣化 中 早い バークは過湿の長続きが原因、ミズゴケは
これまでの評価は、適当な対策をすることによって変わります。ミズゴケの方が、家庭での弱点が致命的なので、バークの方が使いやすいです。


バークミズゴケ鹿沼土
最大保水量小(小鉢生育不良)大(大鉢根腐れ)
乾く早さ遅い(絶対量は少ない)早い(割合のみ、水の絶対量は多い)
水弾き大(小粒)大(柔らか植えで減少)
湿りの進行あり(底の過湿の原因)なしあり
植え込み材料取り除き手間(柔らか植えで減少)
植え込み作業手間(柔らか植えで減少)
カビ・ナメクジ・ハエ中(湿りが続くとカビ)
劣化中(湿りが続くと早い)早い
植え替え間隔2年1年3年

3 バークの弱点対策

問題があると言って手をこまねいていないで、対策を考えればかなり緩和されます。

保水量の少なさ

バークは含水率が低いので、小鉢ではすぐ水が無くなってしまい、枯れやすくなります。これには例えば6cm以下の鉢を使わないことです。また粒が大きいと含水量が少ないので、大鉢以外は大粒(10-25mm程度)を使わないようにします。一方発酵バークと言う粉末混じりは、保水量が多すぎ、鉢底に水がたまると根腐れしやすいので、避けた方が無難です。

乾くと撥水性になる

問題
バークはミズゴケでも同様ですが、一旦乾くと水を吸わなくなります。すると、水やりしても苗は水を吸うことができず枯れやすくなります。また、鉢の表面近くは中よりも乾きやすいので、いつでも水を吸いにくくなっています。
対策
鉢全体が乾いて水を吸いにくくなるのは、1週間以上水やりをしなかった場合です。従って、1週間以上水やり間隔を開けないようにします。
乾き気味の鉢を回復させたり、水を吸わせるには、鉢底から水が流れるまででは不足です。少なくとも、鉢の表面まで水が溜まってバークが水に浸かるようにする必要があります。これでも、完全に濡れた状態にはなりません。
鉢の中が見えないと、乾いているかどうかが分からず、水やりしても濡れたかどうかが分かりません。従って、透明鉢を用いるのが安全です。
5mm以下などの小粒で植えると、特に中への水の通り道がないため、中は湿らせることができず、枯れが起きやすくなります。従って小粒は使わない方が安全です。中粒で少し大きめの鉢に植えます。
高温期には、長時間雨ざらしにすると、再び中まで十分に濡らすことができます。ただし低温期には雨ざらしはは病気や根腐れなどの原因になるのでこの方法が使えません。
水やり間隔が長くなる原因の一つは、鉢の表面近くは乾いているのに鉢底近くがいつまでも湿っていることです。鉢底近くに横穴を開けて、鉢底近くの乾きを早くすると、水やり間隔を短くでき、鉢の上側が長期間乾いたままになるのを避けられます。

劣化を防ぐ

バークは過湿が長く続くと、次第に腐ったり、カビが生えたりして、植え替えが必要になります。過湿になりやすいのは鉢の中心部や鉢底近くです。中心は発泡スチロール芯を入れ、鉢底については近くに穴を開けることにより、他の場所と同じように早く乾かすことができるため、劣化を遅らせることができます。

中粒の単用

以上により、種類と苗(鉢)の大きさにかかわらず、バークの中粒だけで、ほぼ全ての苗を植えることができます。透明軟質ポリエチレンポットを用い、鉢が大きい場合は、スチロール芯を増やし、鉢底近くの横穴を多く上まで開けることにより、同じ扱いができます。

4 シンビジウムは鹿沼土植え

シンビジウムも勿論バーク植えで構いません。ただしシンビジウムは、バーク植えでは水が不足がちになります。それを防ぐためには毎日の水やりが必要で、そうするとバークの劣化が早くなります。そこで、バークよりも保水量が多くて劣化しにくい材料で植えた方が良いです。それには、鹿沼土が適します。小粒では空気が入りにくいので、中粒以上が良いでしょう。

5 バンダはミズゴケ巻き寿司植え

ミニバンダの一種であるフウランは、一般にミズゴケを盛り上げて植えられています。ここではバンダ系との交配種であるアスコフィネティアを同様に底に芯を入れてミズゴケで植えています。バークの通常植えでは根が乾きすぎたり、鉢底が過湿になるようです。
バンダは、一般にバスケット植えにされていますが、毎日水やりが必要で不便です。フウランのミズゴケ植え芯入りとと同様に、ミズゴケを薄い層にしてウレタン芯を包み、ビニールなどのネットで円筒形に包む、巻き寿司植えにすると、根腐れせず、水やりを他の鉢に近い間隔に出来て、生長も良いです。

2010.9.15掲載開始